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2021 Fiscal Year Research-status Report

腫瘍血管内皮細胞による、がん微小環境Feイオン調節機構の解明

Research Project

Project/Area Number 21K15531
Research InstitutionOsaka University

Principal Investigator

村松 史隆  大阪大学, 微生物病研究所, 助教 (90803627)

Project Period (FY) 2021-04-01 – 2023-03-31
Keywordsがん微小環境 / 腫瘍血管 / 神経膠芽腫 / 薬剤耐性 / 鉄イオン / セルロプラスミン
Outline of Annual Research Achievements

本研究は腫瘍血管内皮細胞がセルロプラスミンを産生し、がんの鉄イオン代謝を調節することで、抗がん剤耐性を与えるメカニズムの解明を目指している。本年度は(1)腫瘍血管ニッチが担う病理学的意義、および(2)鉄イオン代謝とがん悪性化との関係性について検証した。
(1)マウス担癌モデルに化学・放射線治療を行い、二光子励起生体イメージング法でがん細胞と腫瘍血管の時空間分布変化を解析した。その結果、抗がん剤耐性細胞は血管近傍に出現し、その場で増殖する性質を有しており、腫瘍血管は耐性遺伝子誘導に深く関与することが判明した。また鉄キレート剤を用いて鉄イオン代謝を抑制し、同様の解析を行ったところ、薬剤耐性細胞の出現が抑制された。内皮細胞とがん細胞間の鉄イオン動態を調べると、内皮細胞は内部に蓄積した鉄イオンをセルロプラスミンで酸化し、がん細胞へ直接供給していることが分かった。これらの鉄イオン供給に関連するタンパク質は、ヒト臨床検体においても内皮細胞に特異的に発現していた。
(2)セルロプラスミンノックアウトマウスに種々の担癌モデルを作製し、鉄イオンががんの悪性度に与える影響を評価した。増殖や転移に関しては、セルロプラスミンの発現の有無による影響は認められなかった。しかしセルロプラスミンが作用しない腫瘍では、組織の鉄イオン量が減少し、薬剤耐性遺伝子の誘導がかからず、化学療法に対する感受性が増加した。鉄イオンが蓄積した耐性細胞では、薬剤耐性遺伝子のプロモーター領域にエピジェネティックな変化が生じており、鉄イオンがDNA脱メチル化酵素の補因子として作用していることが分かった。
以上より、血管内皮とがん組織間における鉄イオン代謝調節機構を阻害すると、がん細胞のゲノムDNAにエピジェネティックな変化を起こし、抗がん剤の効果を高められると考えられた。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

腫瘍血管による鉄イオン調節を介したがん微小環境形成メカニズムの解明はおおむね順調に進んでいる。
(1)膠芽腫GL261、U251細胞および、肺がんLLC細胞、悪性黒色腫B16細胞を移植したマウスに化学・放射線治療を施し生体イメージング解析した。特に2種の膠芽腫において、腫瘍血管周囲に顕著に治療抵抗性細胞が出現するパターンが判明した。さらにセルロプラスミンノックアウトマウスや、鉄イオン代謝阻害下での耐性細胞の動態もイメージング解析できており、令和3年度の研究計画分はおおむね達成できていると考えられる。
(2)セルロプラスミンノックアウトマウスに担癌モデルを作製し、がんの悪性化への影響を評価した。がん組織から内皮細胞、腫瘍細胞および他のストローマ細胞をセルソーターで分離し、セルプラスミンおよび鉄イオン代謝関連遺伝子の発現を調べた。薬剤耐性を獲得した腫瘍組織には鉄イオンが蓄積していることを、メタロアッセイ法およびフェリチンの発現変化で確認した。またヒト臨床病理組織の免疫組織学的解析から、これまでのマウスモデル得られた研究結果との共通点が確認できた。鉄イオン代謝関連タンパク質は腫瘍血管内皮細胞に強く発現しており、腫瘍細胞への鉄供給源として役割をもつ可能性が考えられた。また、耐性能を獲得したがん細胞では、鉄イオンが脱メチル化酵素Tet3の補因子として作用することで、耐性遺伝子Mgmtプロモーター領域のエピジェネティックな遺伝子発現調節に関与していることを突き止めた。
一部の研究計画は前年度中に達成できていないものもあるが、各種の実験条件や代替手段の検討により、研究計画の大きな変更なしに引き続き研究を進捗させられる予定である。また、令和4年度に予定している研究計画の一部を前倒しで実施しており、全体の研究計画の進捗状況としては、おおむね順調に進展していると考えられる

Strategy for Future Research Activity

前年度に続き、血管内皮を中心とした、がん組織における鉄イオン調整機構のメカニズムの解明に取り組む予定である。具体的には以下の2つの軸に沿って研究を進めていく。
(3)血管ニッチ-鉄イオン代謝軸を制御する分子機構の解明
血管内皮細胞特異的セルロプラスミンノックアウトマウスを使った担癌モデルを作り、化学療法後の血管内皮における遺伝子発現パターン変化を調べる。血管内皮細胞をセルソーターで回収し、RNA-Seq解析、ジーンオントロジー解析を通して、セルロプラスミン発現調節に関与するシグナル経路を明らかにする。内皮細胞―がん細胞間のクロストークに着目し、がん細胞由来のシグナル分子と内皮細胞側の受容体分子を決定するため、腫瘍―内皮共培養系で各々の候補遺伝子のノックダウン試験を行う。さらに内皮細胞内に貯留した鉄イオンが、がん細胞への直接的な供給源である可能性があるため、鉄イオンの排出および貯留に関連する遺伝子の発現変化を調べていく。
(4)がん細胞における鉄イオンシグナル分子機構の解明
膠芽腫細胞では、薬剤耐性遺伝子Mgmt発現に関与するシグナル分子の候補を絞り込む。血管ニッチ‐鉄イオン代謝系により、エピジェネティックな遺伝子調節が行われていることが分かってきている。Mgmt遺伝子以外の薬剤耐性に関連する遺伝子の候補を絞り込む。これら候補遺伝子をCrispr-Cas9システム用いてノックアウトしたがん細胞の作製し、薬剤耐性を誘導するメカニズムを解析する。

  • Research Products

    (2 results)

All 2021

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results,  Open Access: 1 results) Presentation (1 results) (of which Invited: 1 results)

  • [Journal Article] Indispensable role of Galectin-3 in promoting quiescence of hematopoietic stem cells2021

    • Author(s)
      Jia Weizhen、Kong Lingyu、Kidoya Hiroyasu、Naito Hisamichi、Muramatsu Fumitaka、Hayashi Yumiko、Hsieh Han-Yun、Yamakawa Daishi、Hsu Daniel K.、Liu Fu-Tong、Takakura Nobuyuki
    • Journal Title

      Nature Communications

      Volume: 12 Pages: -

    • DOI

      10.1038/s41467-021-22346-2

    • Peer Reviewed / Open Access
  • [Presentation] 生体イメージングが解き明かす、セルロプラスミン-鉄イオン代謝を介した血管性がん微小環境2021

    • Author(s)
      村松 史隆
    • Organizer
      第44回日本分子生物学会年会
    • Invited

URL: 

Published: 2022-12-28  

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