2021 Fiscal Year Research-status Report
新たな癌抑制戦略の基盤となる、癌特異的再スプライシング制御機構の解明
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21K15538
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
藤田 賢一 藤田医科大学, 医科学研究センター, 助教 (70816884)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | mRNA再スプライシング / スプライシング完了機構 / がん抑制 |
Outline of Annual Research Achievements |
遺伝子から転写されたmRNA前駆体は正確無比にスプライシングを受けることで、成熟mRNAとなり高次生命現象を具現化する。そのため、スプライシング機構の破綻は様々な疾患、及びがんの原因となる。しかし正常細胞で担保される正確なスプライシング機構が、どのようにしてがんで破綻するか、その全貌は未解明である。この解明へのアプローチとなるのが、当研究室で発見されたmRNA再スプライシング現象、つまり、がん特異的にスプライシング完了機構が破綻し、成熟mRNAが必要以上にスプライシングされるという事実である。今年度はスプライシング完了に伴い成熟mRNAに結合する複合体であるEJC複合体の中核因子(eIF4A3、Y14、MAGOH)が正常細胞に対し、がん細胞では発現量が減少しており、再スプライシング抑制因子として働くことを見出し報告した(10.3390/ijms22126519)。つまり正常細胞ではEJC複合体により構成されるスプライシング完了機構がmRNA再スプライシングを抑制し、がん細胞ではその機構が破綻するため、再スプライシングが生じることが想起される。分子機構の解明に加え、がん細胞において再スプライシング産物の網羅的同定が本研究の鍵となっており、その基盤となるバイオインフォマティクス解析方法の構築を進めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当研究室において、がん細胞におけるTSG101再スプライシング産物の発現量を指標としてsiRNAによる再スプライシング抑制因子の探索が進められてきた。この解析の結果、EJC複合体の中核因子(eIF4A3、Y14、MAGOH)が重要であることが判明し、正常細胞に対し、がん細胞では発現量が減少することを新たに見出した。この研究成果をとりまとめ、論文として報告した(10.3390/ijms22126519)。TSG101再スプライシング産物は様々ながんで共通して生じており、悪性がんではその程度がより深刻化する[Nucleic Acids Res. 40, 7896 (2012)]。加えて再スプライシング産物の網羅的同定が可能になれば、がんにおける再スプライシングの生理的重要性がより明確になる。そこでスプライシング状態の経時変化を解析する実験手法と、バイオインフォマティクス解析方法の構築を試みた。似た実験手法にて解析されたシークエンス解析結果をもとに、再スプライシング産物の網羅的同定手法を構築した。この手法を用いて正常細胞、およびがん細胞におけるスプライシング状態の経時変化をシークエンス解析すれば、がんにおける再スプライシング産物を同定することができる。論文執筆等のため、実験手法の条件検討は十分には進展させることができなかった。本年度にその遅れを取り戻すべく実験計画を部分的に変更した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は前年度に十分に進められなかったがんにおける再スプライシング産物について同定を中心に研究を進展させる。当初の予定では、mRNA再スプライシングが生じる乳腺がん細胞MCF7と、生じない乳腺正常細胞MCF10Aをモデルとして解析したのちに、骨髄性白血病、膀胱がん、前立腺がん細胞株など様々な細胞株での並列解析を予定していた。実験計画の遅れを挽回するために扱う細胞株を減らし、その分の解析費用を、シークエンス解析の深度を深めることに充てることで、データ解析の信頼性を高め、解析を進展させやすくすることを計画している。扱う細胞種が減れば、その下流に計画していた病理組織検体での解析も減らすことができる。他の研究予定として、EJC複合体と共に再スプライシング抑制因子として同定したRBM4Aについても前年度と同様の解析手法を用いて解析することを計画している。前年度における実験計画の遅れのため、本年度で全ての研究計画が完了できないことを考慮し、研究予定の年度延長について計画中である。
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Causes of Carryover |
がん細胞におけるスプライシング完了機構の破綻についての論文(10.3390/ijms22126519)執筆のため、がん細胞において再スプライシング産物の網羅的同定は十分に進展していない。網羅的同定のためのサンプル調整に用いる研究設備費、およびシークエンス解析費用分に計上していた消耗品費として多額を計上していたため、前年度で予定していた物品費の多くの分の使用が遅れている。 今年度において上記解析の実施、および下流の研究についても実施することを計画しているが、全ての研究計画が完了できないことを考慮し、研究計画の年度延長について計画中である。
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Research Products
(1 results)