2021 Fiscal Year Research-status Report
ヒストンメチル化酵素阻害による抗腫瘍効果とviral mimicryの解析
Project/Area Number |
21K15556
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
佐々木 基 札幌医科大学, 医学部, 訪問研究員 (30784441)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ヒストン修飾 / エピゲノム / EZH2 / G9a |
Outline of Annual Research Achievements |
多発性骨髄腫細胞に対するヒストン修飾阻害剤の抗腫瘍効果を検証した。ヒストンH3K27メチル化酵素EZH2阻害剤GSK126と、ヒストンH3K9メチル化酵素G9a阻害剤UNC0638を、それぞれ単剤および併用(いずれも1 μM)で骨髄腫細胞を処理し、cell viabilityアッセイにより増殖抑制効果を検証した。その結果、複数の細胞株においてGSK126・G9a単剤よりも両者の併用が高い増殖抑制効果を示した。それぞれの薬剤によるH3K27メチル化ならびにH3K9メチル化抑制を、ウエスタンブロットで確認した。骨髄腫細胞をGSK126・UNC0538で24時間処理し、免疫不全マウスの皮下に移植した結果、コントロール群と比較して顕著な腫瘍形成抑制効果が認められた。また、別のEZH2阻害剤EPZ-6438、ならびにG9a阻害剤UNC0642を用いて、増殖抑制効果を検証したところ、上記と同様の結果が得られたことから、標的特異性が確認された。EZH2およびEHMT2(G9aの遺伝子)のmRNA発現は、骨髄腫の予後不良と相関した。 次にEZH2・G9aの阻害が細胞周期およびアポトーシスに与える影響をフローサイトメトリーによって検証した。GSK126とUNC0638の併用はG1期停止を誘導した。さらにGSK126とUNC0638はそれぞれ単剤で軽度のアポトーシスを誘導したが、併用により相乗的にアポトーシス誘導が増強した。 次に、EZH2・G9a阻害が骨髄腫細胞の遺伝子発現プロファイルに与える影響を、マイクロアレイによって解析した。その結果、GSK126とUNC0638の併用によって発現上昇する遺伝子には、免疫応答やインターフェロンシグナルに関連する遺伝子が有意にエンリッチしていた。また発現抑制を受ける遺伝子には、MYCやIRF4など骨髄腫の生存に必要なシグナルに関わる遺伝子が多数認められた。これらの結果から、EZH2とG9aの共阻害は、多発性骨髄腫の有効な治療法になりうると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
EZH2とG9aの共阻害による抗腫瘍効果を、in vitroおよびin vivo実験から明らかにすることができた。さらにそれぞれ異なる阻害剤を用いることで、標的特異性を確認することができた。抗腫瘍効果のメカニズムとして、細胞周期停止とアポトーシス誘導があることを明らかにした。また、トランスクリプトーム解析から、抗腫瘍効果のメカニズム解明に迫る知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
EZH2とG9aの抗腫瘍効果に関して、解析を継続する。細胞株の種類を増やして、抗腫瘍効果を検証する。また遺伝子発現アレイの結果を、定量RT-PCRやウエスタンブロットにより検証する。腫瘍細胞におけるEZH2およびG9aの標的遺伝子を網羅的に探索するため、クロマチン免疫沈降シークエンス実験を行う。
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Causes of Carryover |
予定していた学会出張が、全てリモートによる参加となったため、旅費を使用しなかった。また実験の大半を自分で行う事ができたため、人件費の支出がなかった。次年度は、学会出張ならびに、実験補助員の謝金として使用する予定である。
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Research Products
(5 results)