2021 Fiscal Year Research-status Report
膜タンパク質を利用した肺腺がん早期診断マーカーの獲得と実用化に向けた基礎的検討
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21K15559
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
朽津 有紀 北里大学, 医療衛生学部, 助教 (70878272)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 肺腺がん / 早期診断マーカー / 膜タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
肺腺がんは無症状のまま進行する場合が多いため、検診などで早期に検出可能な新規診断マーカーの獲得が重要である。膜タンパク質は細胞外に分泌される分子も多く存在することから血清診断マーカーとして有用である。本研究では肺がん細胞に発現している膜タンパク質をターゲットとした新たな診断マーカー候補分子の獲得を目指した研究を進めている。肺腺がん由来A549細胞に対して、細胞表面タンパク質単離キットを用いて膜タンパク質を回収した。その後、質量分析装置(LC-MS)によりショットガン解析を行い、既存の方法に従って膜タンパク質を同定した結果、同定できたタンパク質の数が予想よりも少なかった。回収した膜タンパク質の溶液中の濃度が低いことが原因と考え、3種類のタンパク質沈殿法(アセトン沈殿、TCA/アセトン沈殿、2D Clean-up Kitを用いた沈殿)により、抽出した膜タンパク質溶液の濃縮を試みた。各手法で濃縮した膜タンパク質溶液を用いて再度、ショットガン解析を試みた結果、LC-MSで同定できるタンパク質数が増加し、その中でもTCA/アセトン沈殿により濃縮した膜タンパク質溶液の同定数が他の手法に比べ最も多く、また各手法間で同定されるタンパク質の種類にも偏りを認めなかったことから、TCA/アセトン沈殿濃縮法を用いることとした。今後、腺がんにのみ発現している膜タンパク質を絞り込むため、扁平上皮がん由来RERF-LC-AI細胞および小細胞がんN231細胞についても同様に膜タンパク質をショットガン解析により網羅的に同定し、同定されたタンパク質の肺腺がん細胞での発現と細胞外への分泌を確認することで、組織、並びに血清診断マーカーとしての有用性を検討する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
肺がん培養細胞から膜タンパク質を回収し、質量分析装置を用いたショットガン解析により膜タンパク質を同定した際、同定数が予想した数よりも大幅に少なかった。この同定数の改善を目的として質量分析に用いるサンプルの前処理条件の検討に時間を要したため、当初の計画にあったRERF-LC-AI細胞およびN231細胞についての検討には至らなかった。現在は前処理の条件が決まったため、計画の遅れを取り戻すべく、他の細胞株に発現している膜タンパク質の同定を早急に行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
①肺がん細胞における網羅的な膜タンパク質の同定:組織型の異なる肺がん細胞(扁平上皮がん由来のRERF-LC-AI細胞、小細胞がん由来のN231細胞)から膜タンパク質を回収し、質量分析装置による網羅的な膜タンパク質の同定を引き続き行う。 ②肺がん細胞での発現と培養上清中への分泌の確認:①で着目した膜タンパク質を対象として、組織型の異なる3種の肺がん細胞株を用いた免疫ブロット法と免疫染色法を行い、候補タンパク質の発現量とその局在を確認する。細胞膜局在の確認が取れた候補タンパク質については、肺がん細胞株の培養上清から抽出したタンパク質を対象とした免疫ブロット法により、細胞外への分泌の有無を確認する。 ③肺がん組織での発現の確認:肺がん組織マイクロアレイを用いた免疫染色法により、肺がん組織においても細胞膜局在であり、腫瘍特異的な発現であるか、あるいは正常組織に比して高発現しているかについて確認することで候補となる膜タンパク質のさらなる絞り込みを行う。
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Causes of Carryover |
肺がん細胞から回収した膜タンパク質溶液の質量分析前に行う処理の条件検討に時間を要したため、免疫ブロット法や免疫染色法に関する費用の執行がなかった。これらの費用については次年度に当初の計画通りに免疫ブロット法や免疫染色法の費用として使用する。
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