2023 Fiscal Year Annual Research Report
膜タンパク質を利用した肺腺がん早期診断マーカーの獲得と実用化に向けた基礎的検討
Project/Area Number |
21K15559
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
朽津 有紀 北里大学, 医療衛生学部, 助教 (70878272)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 肺腺がん / 早期診断マーカー / 膜タンパク質 / ABCC3 |
Outline of Annual Research Achievements |
肺がんは初期症状が乏しい難治性のがんであるため、安全かつ簡易的な検査でより早期の肺がんを検出できるマーカーの獲得が求められている。膜タンパク質は細胞外に分泌される分子も多く存在することから血清診断マーカーとして有用である。本研究では、異なる3種類の肺がん細胞株(腺がん由来:A549細胞、扁平上皮がん由来:RERF-LC-AI細胞、小細胞がん由来:N231細胞)に発現している膜タンパク質を質量分析法により解析することで網羅的に同定した。A549細胞特異的に発現していた数多くの膜タンパク質の中からATP-binding cassette sub-family C member 3(ABCC3)に着目した。以下に実施した概要を示す。肺がん組織切片を用いたABCC3の免疫染色を行った。ABCC3は正常の肺胞上皮細胞ではほとんど発現が認められなかったが、気管支上皮細胞には弱い発現を認め、腫瘍組織では扁平上皮がんに比して、腺がんで有意に高発現していた(p<0.001)。腺がんにおけるABCC3の染色スコアは分化度やステージなど多くの因子と有意に相関していた。また、ABCC3低発現群に比べ、高発現群で有意に予後良好であった(p=0.0179)。さらに、ELISA法を用いて血清中のABCC3レベルを調べた結果、健常者や扁平上皮がん患者と比べて腺がん患者ではABCC3が高値である検体が確認され、それらの検体には早期ステージの患者から得られた血清も含まれていた。今後症例数を増やし、血清診断マーカーとしての有用性を検証する予定である。さらに、ABCC3以外の同定されたタンパク質についても同様に組織診断、並びに血清診断マーカーとしての有用性を検討しており、マーカーとして有望な分子が獲得されている。
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