2023 Fiscal Year Annual Research Report
シングルセル解析を用いた乳癌の腫瘍内不均一性の機序解明と新規治療戦略に関する研究
Project/Area Number |
21K15563
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
椎野 翔 国立研究開発法人国立がん研究センター, 中央病院, 医員 (60784527)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 乳癌 / シングルセル解析 / 腫瘍内不均一性 |
Outline of Annual Research Achievements |
シングル細胞遺伝子発現解析技術を用いることで、乳癌において治療抵抗性の一因となる腫瘍内不均一性に関する遺伝子発現の調査を行った。すでに自施設内で乳癌の検体を用いたシングル細胞遺伝子発現解析データと公共データベース(GEO: The Gene Expression Omnibus database)内に登録されている各データセットを統合し、大規模な乳癌シングル細胞遺伝子発現解析プラットフォームを作成し、より大規模かつ詳細な遺伝子発現データを用いて解析を実施した。各サブタイプの浸潤性乳管癌症例に対してクラスタリング解析を実施したところ、上皮細胞・各種免疫細胞・内皮細胞・間質系細胞等のクラスターで構成されていた。さらに、上皮系マーカー(KRT8)発現のある細胞集団を抽出し、クラスター解析を行ったところ、乳癌関連遺伝子(ESR1・PGR・ERBB2・MKI67・MYC等)の不均一な分布が確認された。ERBB2発現値別に解析を実施したところ、ERBB2高発現群とERBB2低発現群において、様々な遺伝子発現レベルが異なる結果であり、ある種のmicroRNAがERBB2発現の上流制御因子として予測された。また、分子機能は、ERBB2の発現とERの状態によって異なる可能性が示唆された。一方、各症例別のCSC(Cancer stem cell)マーカー、EMT(Epithelial-to-mesenchymal transition)マーカー、転移関連マーカーの遺伝子発現値を解析比較したところ、各症例間で異なる結果であった。以上より、遺伝子発現の不均一性は、ERBB2発現の有無やERの状態のみならず、各患者間においても生じ得る可能性が示唆された。今後、腫瘍内不均一性の形成に関与する遺伝子群の同定および発現を制御するmicroRNAとの関連をさらに調査していく予定である。
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