2021 Fiscal Year Research-status Report
変異型CCR4の分子動態の解明に基づく抗CCR4抗体治療法の革新
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21K15567
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
平松 寛明 名古屋大学, 医学系研究科, 研究員 (70827253)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | CCR4 / モガムリズマブ / ATLL |
Outline of Annual Research Achievements |
CCR4遺伝子のC末端欠損変異がもたらす表現型についての解析を行った。CCR4を発現していない細胞株であるJurkatとHEK293細胞に野生型、およびC末端欠損型CCR4遺伝子を導入し、リガンド依存的な内在化について検証したところ、先行研究同様に、CCL22依存的な内在化が大きく阻害されていた。成人T細胞性白血病リンパ腫 (ATLL)由来の様々な細胞株にC末端欠損型CCR4を発現させ、細胞増殖アッセイを行ったところ、リガンドの有無にかかわらず、空ベクター、または野生型CCR4を発現させた場合と比較して有意な差は認められなかった。ATLL細胞株は元々増殖速度が速いため、差が出にくかったことも一因と考えられる。そこで、末梢血単核球 (PBMC)由来T細胞を用いて、同様にC末端欠損型CCR4を遺伝子導入し、細胞増殖アッセイを行ったところ、リガンド依存的な細胞増殖が認められた。このことから、C末端欠損CCR4はリガンド依存的に細胞内に増殖シグナルを伝達するという新たな機能を獲得していることが示唆された。 ATLL患者のWhole Exome SequenceやRNA-seqデータから、抗CCR4抗体モガムリズマブ治療後にのみ現れる別のCCR4遺伝子変異が同定された。変異部位はモガムリズマブのエピトープ領域の他、膜貫通領域であった。発現ベクターを作製し、JurkatとHEK293細胞に遺伝子導入して解析を行ったところ、膜貫通領域に変異があるCCR4変異体は細胞膜上に発現することができず、小胞体で分解されていることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CCR4遺伝子のC末端欠損変異がもたらす表現型について、内在化の抑制という既知の機能だけでなく、PBMC由来T細胞においてはリガンド依存的に増殖シグナルを伝える機能があることを証明できた。リガンド非存在下では全く増殖できないような条件においても、C末端欠損型CCR4を遺伝子導入したPBMC由来T細胞はリガンド存在下であれば増殖が可能であり、C末端欠損型CCR4が獲得した新たな増殖シグナル経路の同定において有用な条件が確立できた。また、モガムリズマブ治療前後のATLL患者のWhole Exome SequenceやRNA-seqデータから、モガムリズマブ治療後にのみ現れた新たなCCR4遺伝子変異が複数同定できた。これらの変異についても機能解析を行い、モガムリズマブによるCCR4の認識が不能となるメカニズムが同定できた。これらの結果から、ATLLの発症においてはCCR4遺伝子のC末端欠損変異は細胞増殖において有利に働き、ATLLの進行に伴ってCCR4遺伝子変異を持った腫瘍細胞の割合が増えていくが、モガムリズマブ治療においては内在化できないことが効果の増進に寄与し、極めて有効な治療法となる、一方で、CCR4からの増殖シグナルに依存していないATLLはモガムリズマブ治療中に標的であるCCR4に変異が入ることによって耐性を獲得することがあるという、モガムリズマブ治療の感受性と耐性化に関わる変異についての新たな知見が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
C末端欠損型CCR4が活性化する増殖シグナル経路の同定と、その経路に関わるタンパク質の同定を行う。具体的には、リガンド依存的に増殖しているC末端欠損型CCR4を遺伝子導入したT細胞を用いてRNA-seqを行い、活性化しているシグナル経路の同定を行う。同定されたシグナル経路については、ウエスタンブロット法により下流タンパク質のリン酸化等の確認を行う。また、CCR4と結合しているタンパク質を共免疫沈降、および質量分析法によって同定する。PBMC由来T細胞を用いた解析が困難であった場合、CCR4遺伝子にC末端欠損変異を有するATLL由来細胞株を使用する。膜タンパク質と相互作用するタンパク質を網羅的に同定する手法として、非特異的ビオチン化酵素を用いた近接依存性標識法についても検討を行う。同定したタンパク質については、shRNA、またはCRISPR interference(CRISPRi)による発現抑制を行い、リガンド依存的細胞増殖能に与える影響について評価する。 モガムリズマブ耐性化CCR4変異についてもその克服を目指した研究を行う。具体的には、小胞体での分解の阻害による細胞表面への変異型CCR4の発現回復を試みる。薬理学的シャペロンとして作用する分子を探索し、CCR4の安定化による発現回復を試みる。変異型CCR4の小胞体への蓄積によって小胞体ストレスが上昇していた場合、小胞体ストレス応答を引き起こす薬剤に対する感受性を調べる。
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Causes of Carryover |
ウイルスベクター等は既に作製しており、追加での作製がほとんど必要なかった。次世代シーケンスのデータ解析も、既にあるデータを再解析したものであり、追加の費用の必要が無かった。 次年度は、次世代シーケンサーや、質量分析法を用いた網羅的探索実験を行う予定である。
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