2022 Fiscal Year Research-status Report
乳癌発癌機構におけるゲノム不安定性の53BP1を指標とした総合的解析
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21K15572
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
上木 望 長崎大学, 病院(医学系), 助教 (80890201)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 乳癌 / 53BP1 / 乳腺 / 蛍光染色 / 外科手術 / ゲノム不安定性 |
Outline of Annual Research Achievements |
①乳癌の悪性度や治療戦略の指標となる内因性DNA鎖切断や他のGIN指標となるDDR異常をin situで同定し定量可能か? ②乳癌周囲乳腺組織に“前癌状態”としての特異的分子異常が存在し、分子病理学的観点から客観的に評価可能か? 上記2点の問いに答えるため当初は、乳腺症、線維腺腫、異型乳管過形成、非浸潤性・浸潤性乳管癌と背景乳腺組織を保存病理乳腺針生検FFPEを用い53BP1とKi-67蛍光二重染色を行った。しかし、生検検体は微小であり十分な組織量を確保できなかった。そのため保存病理乳腺手術検体FFPEにおいて53BP1とKi-67蛍光二重染色を行うこととした。現在、乳癌手術症例15例、非乳癌手術症例10例にて53BP1とKi-67蛍光二重染色を行っている。解析を行っていないため定かではないが、乳癌手術症例、非乳癌手術症例の正常背景乳腺のいずれも小葉近傍の乳管において53BP1の過剰発現を認めている。小葉から離れた大きな乳管では53BP1の発現が低下しており小葉近傍の乳管では何らかのゲノム不安定性が起こっている可能性が示唆される。また、興味深いことに乳癌の腫瘍部においては53BP1発現低下が 見られる症例が多かった。食道の53BP1解析(Ueki et al, Pathol Res Pract 2019)にて浸潤癌先進部では53BP1発現が有意に低下しておりゲノム不安定性のさらなる増加に伴ってDNA損傷応答の機能自体が低下していることが示唆された。乳癌の研究においても同様のことが起こっているかもしれない。今後は症例の蓄積と解析を加える。また、53BP1とKi-67蛍光二重染色と同時に臨床情報(年齢、閉経の有無、妊娠歴、家族歴、再発、転移、治療歴)の蓄積と解析も行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Pilot studyでは保存病理乳腺針生検FFPEを用い53BP1とKi-67蛍光二重染色を行った。しかし、生検検体は微小であり十分な組織量、背景組織を確保できなかっ た。そのため保存病理乳腺手術検体FFPEにおいて53BP1とKi-67蛍光二重染色を行うこととした。当初予定し、症例をすでに集積していた保存病理乳腺針生検FFPE ではなく、保存病理乳腺手術検体FFPE検体の収集を新たに開始したため研究が遅れてしまった。現在、乳癌手術症例15例、非乳癌手術症例10例にて53BP1とKi-67 蛍光二重染色を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、乳腺症、線維腺腫を含めた良性例8例と浸潤性乳管癌14例の53BP1とKi-67蛍光二重染色、および観察が終了している。今後は症例数をさらに増やし53BP1とKi-67蛍光二重染色、および観察を行っていく。
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Causes of Carryover |
当初は乳癌症例50例を目標に、50例の53BP1とKi-67蛍光二重染色を予定していたが、実際は良性病変8例、浸潤性乳管癌病変14例の蛍光二重染色が完了しているのみである。当初見積もった症例数に達せず、試薬の購入額が当初見積もった額よりも低額であったため次年度使用額が生じてしまった。今後は症例数を増やし、さらに53BP1とKi-67蛍光二重染色を行うための試薬、Anti-53BP1, Rabbit-Poly, A300-272A, BET(100マイクロl)、Goat anti-Rabbit IgG (H+L) Highly Cross-Adsorbed Secondary Antibody, Alexa Fluor Plus 488(1㎎)、Antibody Diluent、DAPI、Protein Block等の購入に使用する計画である。
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