2022 Fiscal Year Research-status Report
大腸癌肝転移に対して免疫原性細胞死がabscopal効果に及ぼす影響の研究
Project/Area Number |
21K15588
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
齋藤 裕人 金沢大学, 附属病院, 助教 (60846624)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 大腸癌肝転移 / abscopal効果 / ICD / 免疫原性細胞死 / がん免疫療法 / 免疫チェックポイント阻害薬 / ICI / 放射線治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
放射線治療法は大腸癌肝転移を含む多発転移に対する治療法の一つであるが、その局所制御作用を期待されて治療が行われている。放射線照射によって、がんの局所制御だけでなく、生体の免疫応答を増幅し全身的な治療効果を惹起させる事象は abscopal効果と呼ばれ、非常に稀な現象として報告されていた。近年、放射線照射された腫瘍細胞において免疫表現型の変化が生じ,腫瘍免疫が増強することが明らかとなりつつある。大腸癌肝転移に対する標準的治療薬であるoxaliplatin、FTD/DPI は免疫原性細胞死 (Immunogenic cell death: ICD)を誘導することが知られている。abscopal効果は、免疫チェックポイント阻害薬との併用によりその効果を高める可能性が期待されている一方、併用による影響は限定的とする報告も多い。我々は、ICDを効果的に誘導し腫瘍免疫を増強することでabscopal効果増強に関して、免疫微小環境の観点から解明することを研究課題とした。 ICDを誘導するCetuximabを放射線治療と組み合わせることによってabscopal効果が増強され、免疫チェックポイント阻害薬とのより高い併用効果を得られると期待できる。これらの併用療法が腫瘍免疫におよぼす病態や抗腫瘍効果を検討し、微小環境の解析によりabscopal効果増強に関する新たな知見を提示する 事ができる点に本研究計画の独自性がある。 本研究では、放射線治療とEGFR抗体を併用することで、大腸癌肝転移における abscopal効果増強の有無を評価する。さらに、免疫正常マウス大腸癌肝転移モデルを用い、放射線療法と抗EGFR抗体による免疫微小環境の改変が、abscopal効果や免疫チェックポイント阻害薬の治療効果に及ぼす影響を明らかにする。現在、安定したマウス大腸癌肝転移モデル作成を試みている状況である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
マウスで大腸癌肝転移の微小環境を検討するため、マウス大腸癌肝転移モデルを作成した。肝転移巣の免疫環境を検討するためBALB/Cマウスを用い、マウス大腸癌細胞株(colon-26)を脾臓より強制注入して肝転移を作成した。肝転移は全例に確認できたが、肝転移巣の免疫環境を検討すると、強制注入のため転移の前段階である線維化を認めず、血管内からの膨張性発育を認め、生理的な転移環境と異なることが判明した。生理的な転移モデル作成のため、マウスの盲腸腸間膜に colon-26を注入することで肝転移モデル作成を行う方法へ変更した。しかしこの方法では、マウス大腸癌肝転移モデルはほぼ作成できなかった。マウス大腸癌細胞株(colon-26)の転移能が弱いままでは大腸癌肝転移モデルの作成ができないため、colon-26の皮下腫瘍を作成し、その皮下腫瘍を取り出し系代を繰り返し行 うことでcolon-26を強化し、強化されたcolon-26を用いて盲腸注入で肝転移の頻度を高める実験を行っているため、予定よりやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
生理的なマウス大腸癌肝転移モデルを作成するため、マウス大腸癌細胞株(colon-26)の脾臓への強制注入ではなく、マウスの盲腸腸間膜にcolon-26を注入するこ とで肝転移モデルを作成する方法へ変更した。通常のcolon-26では肝転移能が弱いため、colon-26をマウス皮下へ注入し皮下腫瘍を作成し、その皮下腫瘍を取り 出し系代を繰り返し行うことでcolon-26を強化し、強化されたcolon-26を用いて盲腸注入で肝転移の頻度を高める実験を行っている。生理的な肝転移モデルを作 成できることを確認し、以下の実験を進めていく予定である。 1マウス大腸癌細胞株、ヒト大腸癌細胞株に対する抗 EGFR 抗体および放射線の併用による細胞毒性効果、2 抗EGFR抗体および放射線の併用がマウス大腸癌細 胞株、ヒト大腸癌細胞株の免疫原性細胞死(ICD)にあたえる影響、3secondary tumorにおける免疫誘導性細胞死の評価、47A7 MAB の併用が放射線 abscopal 効 果と免疫微小環境に与える影響、5ヌードマウス大腸癌肝転移モデルを用いたabscopal効果における免疫応答の検証、67A7 MAB + 放射線併用療法が抗 PD-1 抗 体の抗腫瘍効果に与える影響
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Causes of Carryover |
マウスでの生理的な肝転移モデルで肝転移巣の免疫環境を検討するため、BALB/Cマウスを用い、マウス大腸癌細胞株(colon-26)を脾臓より強制注入するモデル から、マウスの盲腸腸間膜にcolon-26を注入することで肝転移モデル作成を行う方法へ変更した。しかしこの方法では、マウス大腸癌肝転移モデルはほぼ作成できなかったため、colon-26の皮下腫瘍を作成し、その皮下腫瘍を取り出し系代を繰り返し行うことでcolon-26を強化し、強化されたcolon-26を用いて盲腸注入で 肝転移の頻度を高める実験を行っている。本年度はvivoのモデル変更に時間がかかり、vitroの実験が進んでおらず予定より当該助成金が生じてしまった。翌年度からは予定通り、vitroの実験も進め ていくため申請時に請求した助成金と合わせて下記の実験計画を予定している。 1.マウス大腸癌細胞株、ヒト大腸癌細胞株に対する抗 EGFR 抗体および放射線の併用による細胞毒性効果、2. 抗EGFR抗体および放射線の併用がマウス大腸癌細胞株、ヒト大腸癌細胞株の免疫原性細胞死(ICD)にあたえる影響、3.secondary tumorにおける免疫誘導性細胞死の評価、4.7A7 MAB の併用が放射線abscopal効果と免疫微小環境に与える影響、5.ヌードマウス大腸癌肝転移モデルを用いたabscopal効果における免疫応答の検証、6.7A7 MAB+放射線併用療法が抗 PD-1 抗 体の抗腫瘍効果に与える影響。
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