2022 Fiscal Year Research-status Report
シアリダーゼNEU3を標的とした肺腺癌に対する新規治療法の開発
Project/Area Number |
21K15600
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
山本 晃司 埼玉医科大学, 保健医療学部, 講師 (50767150)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 肺腺癌 / ガングリオシド / 形質膜シアリダーゼ / EGFR / 細胞運動能 |
Outline of Annual Research Achievements |
各種の固形癌で発現が亢進する形質膜シアリダーゼNEU3が肺腺癌においても発現が上昇し、特にEGFR変異を有する細胞で有意に発現が亢進していることが分かった。分子標的薬に耐性を持つ肺腺癌細胞では、形質膜シアリダーゼNEU3の発現が亢進し自身がチロシンリン酸化を受けることで活性化していることが分かってきた。NEU3を標的とした新規治療法の開発を見据え、先行研究によりin vitroの系でNEU3はμMレベルの抗インフルエンザ薬添加により触媒作用が阻害されることが明らかとなっている。その抗インフルエンザ薬でNEU3を選択的に阻害すると、リン酸化も阻害され、更に、がん細胞の運動能が抑制されることが示唆された。それらの現象にはNEU3の触媒作用により、細胞膜に局在する糖脂質のダイナミックな変化が関与していることが考えられる。現在、NEU3による糖脂質の分布の変化について調べ、更にその分子種の同定を試みている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
主に細胞膜に局在する形質膜シアリダーゼNEU3が肺腺癌においても発現が異常亢進し、チロシンリン酸化を受けることで活性化し、EGFRシグナリングをポジティブフィードバックにより制御していることが分かってきた。それらの細胞では、NEU3の活性を阻害するとリン酸化が抑制され、更に、がん細胞の悪性形質の1つである運動能が制御されることが示唆された。現在、NEU3の触媒作用による脂質ラフト近傍の糖脂質変化及びタンパク質の相互作用によるシグナル制御に着目し、その機構を詳細に検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
抗インフルエンザ薬により形質膜シアリダーゼNEU3の酵素活性を阻害した細胞の脂質を抽出し、①糖脂質糖鎖の変化を薄層クロマトグラフィーで解析する。次に、変化の見られた糖脂質の②分子種の同定をLC/MSにより試みる。更に、対照細胞とNEU3の高発現細胞を作製し、NEU3が関与する③シグナル経路の同定やがん細胞の運動能への影響について解析を進める予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症の影響で納品が遅れていた試薬が徐々に納品されるようになってきたが、特に糖脂質解析に使用する予定だった試薬に遅れが生じた。それらにより予定していた一部の実験を引き続き次年度も継続して解析するため、予算を計上した。
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