2022 Fiscal Year Research-status Report
独自のパーキンソン病前駆期モデルマウスを用いたドパミン神経細胞変性機序の解明
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21K15624
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
生野 真嗣 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (30808960)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | パーキンソン病 / アルファシヌクレイン / 神経細胞死 / モデルマウス / 前駆病態 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的はパーキンソン病(PD)において運動症状発症前に生じている前駆病態とドパミン神経細胞死との関連を明らかにするための基礎知見を取得することである。アルファシヌクレイン(α-syn)の蓄積とPD前駆病態、そしてドパミン神経細胞死の開始前から軽度脱落状態までを再現した独自のモデルマウスを用い、前駆病態とドパミン神経細胞死との経時的な相関性を検証する。 計画第2年度である2022年度には、α-syn病理の広がりをその経時的変化を含めて病理学的に解析した。その結果、網膜、唾液腺、副腎その他、全身におけるα-syn病理の時間的・空間的知見を獲得することができた。 また、全身での前駆病態と中枢神経病態を繋ぐ炎症・代謝等の因子およびその関係を追及するため、血漿の代謝産物解析の結果をもとに脂質メディエーターに着目した追加解析を行い、脳内脂質の状態を含めて考察を深めた。 さらに前駆病態に関連する介入実験として、主に睡眠に関する表現型(レム睡眠行動障害)に介入する実験を進め、アルファシヌクレインと睡眠障害の変化・相関を解析した。 2023年度は引き続きPD前駆病態における脳と全身の連関に着目した解析を進めるとともに、2022年度までに得られた知見をまとめ、論文報告を行う(現在投稿準備中)。本研究の成果はPDにおけるドパミン神経細胞死のトリガーの解明、ひいては超早期診断および予防法開発に繋がることが期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
全身のα-syn病理の経時的検索、および血漿を用いた代謝産物解析は予定通り進捗しているが、結果解釈を裏付ける追加実験に時間を要している。前駆症状への介入に関してはコロナ禍が長引いていることによる出張制限から自施設での睡眠解析体制を構築したが、研究精度を高めるための追加実験に向けて、より睡眠解析実験設備の充実している施設との連携を予定しており、コロナ禍の収束に伴い2023年度に実施を検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
2021-2022年度に施行した、全身のα-syn病理の広がりと血漿の代謝産物解析の結果をまとめ、さらにその結果から考えられる背景病態に関する追及を深めた上で、脳と全身の臓器連関に着目した論文報告を予定している。また、前駆病態に関連する介入実験としては2021-2022年度に確立した自施設での睡眠解析方法での結果に加え、より睡眠解析設備の充実した施設との連携により、アルファシヌクレイン病理と睡眠異常との関係、およびドパミ ン神経細胞死への影響を検証する。
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Causes of Carryover |
代謝産物解析の結果について、よりパーキンソン病の病態メカニズム解明に向けて結果解釈を深めるため、追加実験が必要と判断した。また、前駆病態への介入実験に関してはコロナ禍の影響で実験計画を再構築した関係で全体に遅れが発生した。そのため次年度使用額が生じたものである。
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