2021 Fiscal Year Research-status Report
フレイル抑制機構におけるエストロゲンの役割:炎症に着目して
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21K15660
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
七尾 道子 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (40876091)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 血管炎症 / 慢性炎症 / エストロゲン / 腹部大動脈瘤 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、エストロゲン減少が引き起こす炎症制御の破綻による慢性炎症が、フレイル関連臓器、特に血管と筋肉の機能低下・老化を引き起こすこと及びその機序を示すことを目的としている。 2021年度は、メスマウス(C57BL/6JJmsSlc, 10週齢および20週齢)において、エストロゲン欠乏を卵巣摘出により惹起した。血管炎症は申請者らが以前確立した塩化カルシウムの局所塗布とアンジオテンシンⅡの持続投与による炎症性大動脈瘤モデルを用いた(Son BK et al., Nat Commun, 2015)。まず、10週齢および20週齢いずれのマウスにおいても卵巣摘出後に血管炎症を誘導したマウス(卵巣摘出+血管炎症誘導マウス)で、炎症惹起に伴う大動脈瘤形成の亢進が認められたが、20週齢においてその変化は顕著であった。20週齢マウスに卵巣摘出したうえでエストロゲンを補充し、血管炎症を誘導したところ、卵巣摘出によって拡大した大動脈瘤の形成はエストロゲン補充によって優位に抑制された。免疫染色では、卵巣摘出と血管炎症誘導によってf4/80陽性の炎症性マクロファージが中膜から外膜に浸潤し、IL-6などのサイトカインに応答してリン酸化されるpSTAT3が同じく陽性となり、これらの変化はエストロゲン補充により抑制された。Real time PCR を用いた大動脈組織のRNA解析では、F4/80, IL-6,IL-1βが卵巣摘出と血管炎症誘導によって上昇し、エストロゲン補充によってsham群と同レベルまで抑制された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
20週齢の野生型メスマウスを用いた検討により、卵巣摘出による内因性女性ホルモンの欠乏によって、腹部大動脈瘤の形成は亢進することを示すことができた。また、エストロゲンの補充によって、卵巣摘出による腹部大動脈瘤の形成を抑制することが明らかとなり、エストロゲンの血管炎症抑制作用が示唆された。 これらの結果はすでに国内学会にて報告することができており、研究はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究によって、エストロゲンが炎症性サイトカインの抑制に関与することで血管炎症を抑制することが示唆される。 今後は、特に鍵となる炎症性サイトカインの特定およびエストロゲン受容体の関与についてより詳細な機序解明を行う。
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Research Products
(5 results)