2023 Fiscal Year Annual Research Report
フレイル抑制機構におけるエストロゲンの役割:炎症に着目して
Project/Area Number |
21K15660
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
七尾 道子 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (40876091)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | エストロゲン / 慢性炎症 / フレイル / 腹部大動脈瘤 / 廃用性サルコペニア |
Outline of Annual Research Achievements |
女性では、更年期以降エストロゲン(E2)分泌が低下し、加齢と共に動脈硬化や骨粗鬆症、サルコペニア、認知症の発症リスクが高まることが知られている。これらの病態は心身の機能低下に繋がり、フレイル発生の危険因子となる。本研究は、E2減少が引き起こす炎症制御の破綻による慢性炎症が、フレイル関連臓器、特に血管と筋肉の機能低下・老化を引き起こすこと及びその機序を示すことを目的としている。 2021年、2022年度の研究によって、エストロゲン(Estrogen:E2)がIL-6, IL-βなどの炎症性サイトカインの抑制に関与することで血管炎症を抑制し、大動脈瘤形成を抑制することが示唆された。 2023年度は、E2の血管炎症の主座がどこにあるのか(マクロファージなのか、血管平滑筋細胞なのか、あるいはその他なのか)を検証すべく、まず腹腔マクロファージ及びマウスマクロファージ様細胞RAW264.7細胞を用いて検討を行った。野生型メスマウス(C57BL/6JJmsSlc, 7-8週齢)の腹腔にBrewer's チオグリコレート培地をマウスあたり1ml注射(i.p)し3-4日飼育後に磯フルラン吸入麻酔を用いて安楽死させた。マクロファージ細胞を回収後に培養し、AngⅡ/LPS刺激に対するE2の作用およびエストロゲン受容体(α, β)の関与を検討した。AngⅡによる刺激は弱く、その刺激を抑制するE2の作用は確認できなかったが、LPS刺激に対してE2(10-7~-9M)は抑制的に働くことが示された。 筋肉におけるエストロゲンの働きについては卵巣摘出+血管炎症によってヒラメ筋重量が減少し(腓腹筋量は不変)、筋機能評価では握力が低下(持久力は不変)した。いずれもE2補充により回復したことから一部の筋肉・筋機能においてエストロゲンは炎症抑制的に働くことが示唆された。
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