2022 Fiscal Year Research-status Report
NAMPTをターゲットとした変形性膝関節症に対する電気鍼治療効果の基礎的解析
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21K15669
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
池本 英志 昭和大学, 医学部, 助教 (40568119)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 電気鍼治療 / 変形性膝関節症 / NAMPT / Sirt1 |
Outline of Annual Research Achievements |
最近、変形性膝関節症(膝OA)は細胞の老化・寿命を制御するSirt1の軟骨内での減少が関与すると報告された。Sirt1の発現は全身の各代謝のペースメーカーNADの合成酵素NAMPTの増減と相関しており、NAMPTの増加が疾患改善のカギを握る。一方で電気鍼(EA)は膝OAの症状を緩和させることが報告されている。本研究の目的は、EAのNAMPTを介した膝軟骨の退行性変性の抑制効果を明らかにすることである。 膝OAの発症・進行には、関節軟骨の細胞外マトリックスを分解するMMP(matrix metalloproteinase)およびADAMTS(a disintegrin and metalloproteinase with thrombospondin motifs)遺伝子ファミリー分子が重要な役割を果たしているが、その供給源は関節滑膜である。本年度は膝OA(DMM)モデルラットを作製し、膝滑膜におけるMMPとADAMTS遺伝子ファミリー分子およびNAMPTの発現に対するEAの効果について検討した。実験では動物を5群に分けた:Control群、Sham群、DMM群、DMM+EA(I)(足三里-曲泉)群、DMM+EA(II)(足三里-膝頂)群。EAは経穴に対して3Hz、30分、週3回、4週間実施した。行動解析として、ロタロッド試験を用いて運動機能を術後4週目に評価した。その結果、Control群に対して有意に短縮したDMM群の運動時間は、EA(I、IIともに)によって有意に伸びた。その後、各群膝関節を採取し、滑膜からWestern blotting用サンプルの調整法を確立した。現在、Western blotting実験を終え、データ解析中である。この実験において、足三里-曲泉だけでなく、足三里-膝頂を組み合わせたEAも膝OAモデルの運動機能低下を抑制することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和4年度は膝OAモデルラットの膝滑膜組織におけるMMPおよびADAMTS遺伝子ファミリー分子およびNAMPTの発現に及ぼすEAの効果について検討した。Western blotting法による解析にあたり、既報に基づいて膝関節滑膜をホモジナイズしてタンパク定量を行いサンプルを作製したが、脂肪が混入したり、ローディングコントロールが安定しないなどの結果が出て、サンプルの調整法を確立するまでに予想以上の時間を要した。現在は各群間の膝関節滑膜中のMMPとADAMTS遺伝子ファミリー分子、およびNMAPTの発現量について検討を終え、データ解析中である。またこの実験において、足三里-曲泉を組み合わせたEAだけでなく、足三里-膝頂(膝蓋骨の上に位置する経穴)を組み合わせたEAを行った群においても、膝OAモデル動物の運動機能低下を抑制することが明らかとなった。したがって、今後は足三里-曲泉および足三里-膝頂の組み合わせを対象として実験を行い、様々な指標について比較検討を行っていく。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度に行った実験から、EAによって膝OAモデル動物の関節滑膜からのMMPおよびADAMTS遺伝子ファミリー分子発現量が抑制されたならば、令和5年度ではEAによる脂肪組織からのNAMPT産生の解明を目指す。NAMPTは脂肪細胞から産生されることから、Control群、Sham群、DMM群およびDMM+EA(I)(足三里-曲泉)群、DMM+EA(II)(足三里-膝頂)群を作製し、各群の膝蓋下脂肪体・皮下脂肪組織および血漿中のNAMPT発現量をWestern blotting法およびELISA法を用いて解析する。そして、DMM群とDMM+EA(IおよびII)群間のNAMPT発現量に有意な差が認められた場合は、DMM+EA(IおよびII)+NAMPT阻害剤(FK866)を腹腔内投与(10 mg/kg)する群を追加して、同様の解析を行う。さらに膝関節軟骨を採取、ホモジナイズしてMMPおよびADAMTS遺伝子ファミリー分子およびSirt1の発現量を測定する。もし術後4週目のDMM群とEA治療群の間で仮説通りの結果が伴わなかった場合は、術後8週目まで治療期間を延ばすことを検討する。 また令和5年度は膝軟骨細胞をIL-1βで刺激したin vitro炎症性モデルを用いたEAの軟骨保護効果と機序の解明を目指す。正常ラット膝関節軟骨から単離した軟骨細胞にIL-1β(0.1 ng/ml)を添加してin vitro炎症モデルを作製する。そこへEA刺激後のラット血漿を添加する。EAによって脂肪細胞から産生されたNAMPTが軟骨細胞のSirt1発現を促し、細胞外マトリックスを分解するMMPおよびADAMTS遺伝子ファミリー分子の発現を抑制するかを検証する。
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Causes of Carryover |
令和4年度は前述の通り、膝関節滑膜からのWestern blotting用サンプル調整法の確立に時間を要した。その結果、計画していた実験が遅れ、次年度使用額が生じた。術後4週間経過した各群の試料は採取済みであり、その試料を用いてNAMPT、NAD、Sirt1の発現を生化学的に検討していくために、各種抗体、ELISAキット、NAMPT阻害剤等の購入に研究費を充てる予定である。また術後4週間のEA治療で明確な効果が見られない場合は、術後8週間経過した動物を作製して実験に供する予定であり、実験動物や消耗品等の購入に研究費を充てる。さらに、正常ラット膝関節軟骨から単離した軟骨細胞を使ったin vitro実験を開始するために、実験動物、試薬、軟骨細胞外基質分解酵素測定用として各種ELISAキットなどを購入する予定である。
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[Presentation] PEAK PRP Systemを用いて調整された多血小板血漿の健常ボランティアにおける血清との比較成分分析2022
Author(s)
奥茂 敬恭, 佐藤 敦, 嚴樫 香名子, 太田 真隆, 大池 潤, 大熊 公樹, 古屋 貴之, 池本 秀志, 安達 直樹, 神崎 浩二, 砂川 正隆
Organizer
第50回日本関節病学会
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