2021 Fiscal Year Research-status Report
遺伝性トランスサイレチンアミロイドーシスにおける脳アミロイド血管症の病態解析
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21K15701
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
野村 隼也 熊本大学, 病院, 助教 (00880080)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ATTRvアミロイドーシス / 脳アミロイド血管症 |
Outline of Annual Research Achievements |
遺伝性ATTRアミロイドーシス(ATTRvアミロイドーシス)は、主に肝臓で産生された変異型トランスサイレチン (TTR)が原因となりアミロイドを形成し、全身諸臓器に沈着することにより様々な臓器障害を引き起こす常染色体優性の難病である。これまで変異型TTRの産生を抑制する肝移植療法が行われ本症の予後を劇的に改善したが、長期生存例は脳アミロイド血管症による中枢神経症状を高頻度に呈することが明らかになってきた。本研究では、本症の脳血管に沈着しているTTRアミロイドの生化学的特徴を、主に質量分析的手法を用いて明らかにすることで、本症の治療ターゲットを解明し、アミロイド共存蛋白質に着目することで、アミロイド沈着機構の解明、さらには発症予測マーカーの開発につなげる。 計画初年度である2021年度は、ATTRvアミロイドーシスの非肝移植4例と肝移植5例を対象に、Congo red染色と抗TTR抗体を用いた免疫組織染色を行い、脳アミロイド血管症の病理学的所見を解析した。脳血管へのアミロイド沈着量および血管構造変化の程度は、肝移植の有無にかかわらず罹病期間に相関して進行する傾向が認められた。また、質量分析的手法(LC-MS/MS)を用いて、ATTRvアミロイドーシスの脳組織と心臓組織に沈着するアミロイドの生化学的特徴を、非肝移植4例と肝移植5例において比較検討した。その結果、血管に沈着したアミロイドを構成するTTRは、脳組織においては非肝移植症例、肝移植症例とも変異型優位であった。一方、心臓組織においては、非肝移植症例では変異型優位、肝移植症例では野生型優位であった。このことから、肝移植後の脳血管に沈着したアミロイドの形成は移植肝由来の野生型TTRの影響をほとんど受けず、脈絡叢由来の変異型TTRの影響を受けることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画初年度である2021年度は、ATTRvアミロイドーシスの非肝移植4例と肝移植5例を対象に、Congo red染色と抗TTR抗体を用いた免疫組織染色を行い、脳アミロイド血管症の病理学的所見を解析した。また、質量分析的手法(LC-MS/MS)を用いて、ATTRvアミロイドーシスの脳組織と心臓組織に沈着するアミロイドの生化学的特徴を比較検討した。脳血管へのアミロイド沈着量および血管構造変化の程度は、肝移植の有無にかかわらず罹病期間に相関して進行する傾向が認められた。また、血管に沈着したアミロイドを構成するTTRは、脳組織においては非肝移植症例、肝移植症例とも変異型優位であった。一方、心臓組織においては、非肝移植症例では変異型優位であり、肝移植症例では野生型優位であった。このことから、肝移植後の心臓組織の血管に沈着したアミロイドの形成は移植肝由来の野生型TTRの影響を受けるが、肝移植後の脳血管に沈着したアミロイドの形成は移植肝由来の野生型TTRの影響をほとんど受けず、脈絡叢由来の変異型TTRの影響を受けることが示唆され、本疾患の治療ターゲットは脈絡叢であることが示唆された。以上のように、脳アミロイド血管症の病理学的解析、質量分析法による解析の結果が得られたため順調と考えられる。次年度の研究に向けての準備が整った。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、前年度の計画を継続して行うと同時に、更に研究を発展させ、ATTRvアミロイドーシスの脳血管アミロイド病変に存在するアミロイド共存蛋白質にフォーカスした研究を行う。ATTRvアミロイドーシス症例のアミロイドが沈着した脳血管とコントロール症例のアミロイド沈着のない脳血管を、レーザーマイクロダイセクションとLC-MS/MSを用いて網羅的に解析し、原因蛋白質であるTTR以外のアミロイド共存蛋白質を同定する。同定した共存蛋白質に対する抗体を用いた免疫染色を行い、同定した共存蛋白質がATTRvアミロイドーシス症例のアミロイドが沈着した脳血管に特異的に存在するか、TTRと共局在するかを検討する。in vitroでのチオフラビンTなどを用い、同定した共存蛋白質のアミロイド線維形成に与える影響を評価する。また、発症予測マーカーの候補蛋白質に関しては、ATTRvアミロイドーシス患者と健常者の血清または髄液における発現の違いをELISAにて定量的に比較検討する。
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Causes of Carryover |
LC-MS/MSにより同定した共存蛋白質に対する抗体を用いた免疫染色のため、一次抗体/二次抗体を購入する。in vitroでのチオフラビンTなどを用い、同定した共存蛋白質のアミロイド線維形成に与える影響を評価するために、リコンビナント蛋白質を購入する。発症予測マーカーとしての有用性を検証するために、候補蛋白質のELISA kit を購入する。当初の計画どおり、以上に示した研究に次年度の研究費を用いる。
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