2021 Fiscal Year Research-status Report
The development of disease- modifying therapies for progressive myoclonus epilepsy
Project/Area Number |
21K15704
|
Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
豊田 知子 産業医科大学, 医学部, 助教 (30596432)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症 / ポリグルタミン病 / てんかん / 神経変性 / オートファジー / フラボノール |
Outline of Annual Research Achievements |
ポリグルタミン病などの神経変性疾患では、分子シャペロンーユビキチンープロテアソーム系(UPS)やオートファジーの機能を凌駕して変異蛋白質が蓄積し、神経変性が惹起される。神経変性疾患の発症時期に中年期以降が多いのは、加齢と共に蛋白質分解系の機能が衰えてくることが一つの原因と考えられている。従って、オートファジーは神経変性疾患の重要な治療ターゲットとして注目されている。ポリグルタミン病である歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)は、原因遺伝子内のCAGリピートの異常延長により病因蛋白質の神経組織内への異常な蓄積が生じて、ニューロンなどが特異的に変性死に陥る。DRPLAの若年発症型・早期成人型は進行性ミオクローヌスてんかん(PME)を呈する神経変性疾患で、原因遺伝子はatrophin-1である。進行性で予後不良の転帰を辿るPMEを呈する疾患として本邦で最も多いのがDRPLAであり根治的治療方法がない。一方、PMEの一つであるLafora病では、mTORを阻害することが病態改善につながっている。私達は、生薬の有効成分である種々のフラボノールにオートファジー活性化作用を見い出している。本研究では、mTOR阻害やオートファジー活性化の病態改善効果を検討するため、ケンペロール(Kaempferol)及びエベロリムスなどの化合物投与に関わるターゲット分子を同定し、DRPLAの細胞及び動物モデルにおける病因蛋白質の選択的な分解効果やてんかん抑止の分子機構を細胞、分子、超微形態レベルから明らかにする。本研究では、オートファジー活性化メカニズムを解明し、mTORの阻害あるいはオートファジー活性化に基づいたPMEの抑止効果をポリグルタミン病であるDRPLAの細胞モデルやマウスモデルを用いて明らかにする。さらにPMEや神経変性疾患の進行を止める病態抑止治療法を開発する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、まず、細胞モデルにてケンペロールのオートファジー活性化効果を検討し、異常延長したCAGリピートを含有したAtrophin-1に対する分解促進効果を明らかにしている。また、ケンペロールがポリグルタミン病細胞モデルに対して、オートファジー活性化を通して変異蛋白質に特異的な分解を促進する作用を持つことを見い出している。さらに、病因蛋白質の減少効果のメカニズムを探るために、パルス-チェイス実験、各病因蛋白質とオートファジー関連蛋白との相互作用について分子生物学、免疫沈降、蛍光染色、電顕、免疫電顕などの手法で調べ、病因蛋白質の選択的な分解に関わる分子機構を探索している。 次にDRPLAトランスジェニックマウスを用いて、ケンペロール投与による治療効果を検討し、対照群に比して治療群でRotarod法を用いた運動機能の評価、体重変化、生存率などで表現型の改善効果を得ている。 また、HIKESHIの高発現による分子シャペロンの細胞内発現分布の変動や部位特異的なシャペロン機能の増強がDRPLAトランスジェニックマウスの病態の改善につながるかの検討を開始している。さらに、HIKISHI高発現の治療効果を検討するために、chicken β-actinプロモーターの調節下でHIKISHIを高発現するマウスモデルを既に作成した。
|
Strategy for Future Research Activity |
ポリグルタミン病などの神経変性疾患では、分子シャペロンーユビキチンープロテアソーム系(UPS)やオートファジーの機能を凌駕して変異蛋白質が凝集して蓄積し、この過程に神経毒性が存在し神経変性が惹起される。有効な治療法は、病因蛋白質の異常な凝集を抑止したり、蓄積する量を減らすことで達成される。ケンペロール(kaempferol:KF)は、茶、フルーツ、野菜、及び豆類等をはじめとする多くの植物に含まれる天然フラボノールである。KFは抗酸化、抗炎症、抗がん、抗糖尿病、抗骨粗鬆症、及び抗アレルギー活性等の様々な薬理作用を有しており、とりわけ、強い抗酸化作用が注目されている。本研究では、KFにオートファジーを活性化する作用を見いだし、異常蛋白質の蓄積に起因する疾患の新規治療法の可能性を探索している。今後の研究では、神経培養細胞(Neuro2a)に正常及び変異したAtrophin-1を発現させ、KFを投与して、オートファジー活性化の機構の観察とそれぞれの病因蛋白質の発現量を検討する。KFによるLC3-II、Beclin1、p62などのオートファジーのプレイヤーの発現レベルを検討する。KFと3-メチルアデニンとの同時投与などを行い、オートファジーを阻害した場合のKF によるLC3-IIの発現量の変化を検討する。さらに、Atg5又はp62のノックダウンを行い、KFによるLC3-IIの発現量の変化を検討する。KFによる変異したAtrophin-1の凝集体形成や発現量の変化を検討し、パルスチェイス法で分解過程を観察する。以上のようなKFによる病因蛋白質の分解の効果を検討することによって、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)の神経機能障害を改善させる可能性を検討する。
|
Causes of Carryover |
コロナウイルスの蔓延のために学会参加がオンラインになったことと今年度は動物実験の観察に時間を使用したため次年度使用額が生じたが、今年度は細胞実験を多く行う予定であり、計画通りに使用できる見込みである。
|
Research Products
(2 results)
-
[Journal Article] Complete sequencing of expanded <i>SAMD12</i> repeats by long-read sequencing and Cas9-mediated enrichment2021
Author(s)
Mizuguchi T, Toyota T, Miyatake S, Mitsuhashi S, Doi H, Kudo Y, Kishida H, Hayashi N, Tusburaya RS, Kinoshita M, Fukuyama T, Fukuda H, Koshimizu E, Tsuchida N, Uchiyama Y, Fujita A, Takata A, Miyake N, Kato M, Tanaka F, Adachi H, Matsumoto N.
-
Journal Title
Brain
Volume: 144
Pages: 1103~1117
DOI
Peer Reviewed / Open Access
-