2022 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子重複モデルマウスを用いた発達障害の分子基盤の解明
Project/Area Number |
21K15726
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
川村 敦生 金沢大学, 医学系, 助教 (40898087)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 発達障害 / 自閉症 / 遺伝子重複 / モデルマウス / 神経発生 / クロマチンリモデリング |
Outline of Annual Research Achievements |
多くの発達障害の発症には遺伝的要因が強く関与しており、患者を対象としたゲノム解析から発症に関連する単一遺伝子のコピー数の変化(欠失や重複)が多数同定されている。近年、クロマチンリモデリング因子CHD8が最も有力な自閉症原因候補遺伝子として同定され、世界中で大きな反響を呼んでいる。一方で、このCHD8の遺伝子座を含む領域の重複が発達障害の患者から相次いで発見されている。本課題では、CHD8遺伝子重複による発達障害のモデルマウスの確立と発症メカニズムの分子基盤の解明を行う。 われわれはまずCHD8遺伝子をノックインしたマウスを作製した。CHD8遺伝子を1アレルから発現させたマウスは少し体が小さいが正常に生まれ、CHD8が正常の1.5倍(重複相当)発現していた。一方でCHD8遺伝子を2アレルから発現させたマウスは出生後に死亡することが判明し、適切な発現量が個体発生に重要であることが分かった。この新規に作製した遺伝子重複マウスを用いて網羅的な行動バッテリーを行ったところ、このマウスはいくつかの行動試験において顕著な行動異常を示すことが明らかになった。さらにこのマウスの胎生期脳を用いて網羅的な遺伝子発現解析を行った。その結果、神経分化の制御に関わる転写因子の発現が変化しており、神経発生遅延が起こることが明らかになった。またChIP-seq解析からCHD8は発現が変化していた遺伝子のプロモーター領域に結合していた。さらに、CHD8過剰発現により神経の機能に関わる遺伝子領域のクロマチンアクセシビリティに変化が見られた。以上の解析から、CHD8過剰発現によるクロマチン構造異常が神経発生に影響を与える可能性が示唆された。
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