2021 Fiscal Year Research-status Report
抑制性神経伝達障害に着目した統合失調症の新規治療法開発
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21K15742
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
藤原 和之 群馬大学, 大学院医学系研究科, 講師 (20735154)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | GABA / 抑制姓神経伝達 / GAD67 / ゲノム編集 / ノックアウトラット |
Outline of Annual Research Achievements |
統合失調症は人口の1%が発症する代表的な精神疾患である。その細胞レベルの病態として、GABA合成酵素であるGAD67の発現低下が注目されている。我々は最近、GAD67をゲノム編集法で人工的に欠損させたGAD67ノックアウトラットを開発した。予備的な研究により、GAD67ノックアウトラットは認知機能の障害が示唆されている。
本研究では、このGAD67ノックアウトラットの認知機能プロファイルをより精緻に解析、明らかにする。また、GAD67ノックアウトラットの認知機能障害をはじめとする様々な行動学的異常を、治療することができるのか否かを解析する。
初年度である2022年度は本研究で用いる認知機能評価系の確立を行った。GAD67ノックアウトラットの「物体の再認」と「位置の再認」が同等に行えるのか、それとも両方とも障害されているのか、片方のみ障害されているのかをObject recognition taskとObject place recognition taskを用いて解析した。どちらの課題も10分間の物体提示を行い、24時間のインターバルを置き、5分間のテストを行った。その結果、物体の再認はGAD67ノックアウトラットも野生型ラットも同等の成績を示した。一方、位置の再認については、GAD67ノックアウトラットは成績が顕著に低下していた。これらの所見は、GAD67ノックアウトラットの認知機能障害が、物体の同定よりも空間認知において顕著であることを示している。この結果は、我々の予備的な報告(Fujihara et al., 2020)と整合的である。このタスクは、以前我々の研究で実施した8方向放射状迷路よりも簡便に実施することができるため、GAD67レスキュー実験の評価系として適していると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
認知機能の評価系は順調に確立できたため順調と判断したが、GAD67分子をレスキューするためのGAD67-FLExラットの確立には至っていないため、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
GAD67ノックアウトラットは66%が離乳前に死亡するため、実験に必要な個体の確保に繁殖の労力・コストを要する。そのため、GAD67ヘテロノックアウトラットで代替可能かどうか、ヘテロノックアウトラットではどの程度の行動学的異常を示すのかについても解析を進め、効率的に実験を進められるよう工夫したい。
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Causes of Carryover |
行動実験系の確立に必要な個体数が予想より少なく済んだこと、また、行動実験系確立に専念しておりGAD67-FLExラットの繁殖を制限したため、動物飼育費が少なかった。来年度は、繰り越し分を用いて遅延している実験部分に充当する予定である。
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