2023 Fiscal Year Annual Research Report
MMP-9は認知症の新たな早期診断バイオマーカーになり得るか?
Project/Area Number |
21K15747
|
Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
阿部 紀絵 横浜市立大学, 医学研究科, 客員研究員 (90880071)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | dementia / neurodegeneration / inflammation |
Outline of Annual Research Achievements |
MMP-9はアルツハイマー型認知症(AD)をはじめとする認知症の早期診断バイオマーカーとして注目されている。MMP-9の活性化要因およびMMP-9がADの病態促進機序を解明するため、 まず、ADのリスク遺伝子であるApoEε4のキャリアとノンキャリアの軽度認知障害(MCI)患者において、MMP-9と認知症移行率との関係を調べた。その結果、ApoEε4キャリアでは、血漿のMMP-9濃度と認知症移行率との有意な相関がみられた。ApoEε4ノンキャリアにおいても、両者の相関傾向が認められた。MMP-9が神経変性を促進し出す閾値やタイミングの調整にApoE4に関連した因子が関与している可能性が考えられた。 そこで次に、アルツハイマー病の発症率の性差(男<女)に着目し、ApoE遺伝子多型の他にも、筋肉量、糖脂質代謝、女性ホルモン、内服薬などの因子と血漿MMP-9濃度の経時的変化との関連を解析した。しかし、いずれの因子もMMP-9の経時的な変化との有意な関係は認められなかった。 申請者の異動等の事情により、前向きコホート研究による検証は、十分に実施することができなかった。 以上より、本研究では、MMP-9がApoEεに関連した何らかの因子(X)によりADおよび非AD型の認知症の病態促進に関与している可能性が示されたが、Xを特定することはできなかった。 近年、MMP-9はAD患者の脳内で蓄積する異常蛋白であるtauのプロセッシングや記憶において重要な働きを担う海馬周辺の血液脳関門の障害との関連することが報告されており、今後、更なる研究が期待される。
|