2023 Fiscal Year Annual Research Report
エピジェネティック制御機能を有するメチル基転移酵素に着目した自閉症病態の解明
Project/Area Number |
21K15752
|
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
中村 匠 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, 研究員 (40881123)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 自閉スペクトラム症 / ヒストンメチル化 / KMT2C / トランスクリプトーム解析 / LSD1阻害剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
自閉スペクトラム症(Autism spectrum disorder, ASD)は、社会性の変化や固執行動を特徴とし、幼少期から顕在化する神経発達障害である。近年のアメリカでの疫学調査によると、8歳の子どもの2.8%程度の高い有病率を示す一方で、病態機序が解明されていないために根本的な治療方法が確立されておらず、ASDのもたらす社会的影響も大きい。近年の大規模な遺伝学的解析により、遺伝要因が発症に寄与していること、統計学的に有意な関連がみられる遺伝子群が多数報告されている。これらのASD関連遺伝子群の中には、クロマチン修飾に関わるエピジェネティック因子が多く含まれ、このような分子機能がASD病態に関与する可能性がある。本研究では、このようなクロマチン修飾機能に関わるASD関連遺伝子のひとつであるKMT2C遺伝子に着目し、遺伝子改変マウスを用いた病態解析を行った。CRISPR/Cas9システムにより樹立したKmt2c変異マウスが、社会性の低下といったASD様行動を示すことをこれまで明らかにしていたが、その分子基盤に迫るために、変異マウスの脳サンプルを用いて、Kmt2c遺伝子の欠損がもたら すトランスクリプトーム変化を解析し、変異マウスの脳において既知のASD遺伝リスクが変動していることなどを明らかとした。さらに、Kmt2c遺伝子の欠損による分子機能の変化をレスキューすると予測される薬剤が、樹立した遺伝子改変マウスのASD様行動を改善することを見いだし、治療応用につながる結果を得た。本年度には、上記研究の結果をまとめた内容を、Molecular Psychiatry誌にて発表した。
|
-
-
-
-
[Presentation] Transcriptomic dysregulation and autistic-like behaviors in haploinsufficient mice of a histone methyltransferase rescued by a drug treatment2023
Author(s)
Nakamura Takumi, Nakajima Kazuo, Yoshihara Toru, Tanegashima Chiharu, Kadota Mitsutaka, Toyoshima Manabu, Kobayashi Yuki, Honda Kurara, Ueda Junko, Hara Tomonori, Itohara Shigeyoshi, Yoshikawa Takeo, Kuraku Shigehiro, Asano Masahide, Kasahara Takaoki, Tsuboi Takashi, Takata Atsushi, and Kato Tadafumi
Organizer
第45回 日本生物学的精神医学会年会
-
-