2021 Fiscal Year Research-status Report
肝臓癌TACE治療用超高精細造影CTの至適検査法とナビゲーションAI開発
Project/Area Number |
21K15772
|
Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
永田 紘之 藤田医科大学, 医学部, 講師 (70795608)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 超高精細CT / 肝細胞癌 / 肝動脈化学塞栓術 / vessel navigation system / AI / DLR |
Outline of Annual Research Achievements |
肝臓もしくは膵臓の悪性腫瘍の術前の腹部dynamic CTを、超高精細CTもしくはmultidetector CT(以下 MDCT)でおよそ40症例に施行した。超高精細CTの画像データは、0.25mm、0.5mm、1mmスライス厚で512×512マトリクス、1024×1024マトリクス、2048×2048マトリクスにて、MDCTの画像データは、0.5mm、1mmスライス厚で512×512マトリクスにて、画像再構成をした。画像再構成法はhybrid-type iterative reconstruction(以下 IR)、model-based IR(以下MBIR)、deep learning reconstruction(以下 DLR)を使用した。得られたCT画像の血管描出能を放射線診断専門医が評価し、hybrid-type IRやMBIRと比較した。DLRはhybrid IRやMBIRと比較し、腹部主幹動脈の描出能が向上していることが示唆された。DLRによる腹部主幹血管の描出能について北米放射線学会(The Radiological Society of North America)などの海外学会で報告する予定である。 またこれらの症例のうち、肝細胞癌(hepatocellular carcinoma: 以下 HCC)に対する肝動脈化学塞栓術(transcatheter arterial chemoembolization: 以下 TACE)を予定している症例については、得られたdynamic CTの画像データからartificial intelligence(以下 AI)併用vessel navigation system によるfeeding arteryの検出を試みた。また実際のTACE治療時のdigital subtraction angiography(以下 DSA)の画像データでも同様にfeeding arteryの検出を試みた。Feeding arteryの検出能はdynamic CTと比較し、DSAの画像データの方が優れていることが示唆された。これは肝動脈の描出能に起因するものというよりは、腫瘍の造影効果のタイミングやvessel navigation systemのAIのアルゴリズムが影響していると思われた。AIによるfeeding arteryの検出能に関する問題点はキヤノンメディカルシステムズ社にfeed backしている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
およそ40症例のMDCTの腹部dynamic CTの画像データをhybrid-type IR、MBIR、DLRにて再構成した。腹部主幹動脈(腹部大動脈、腹腔動脈、固有肝動脈、左右肝動脈、胆嚢動脈、背側膵動脈)について、それぞれ関心領域を設定し、CT値、signal-to-noise ratio(以下 SNR)、contrast-to-noise ratio(以下 CNR)を測定した。胆嚢動脈を除く全ての動脈において、DLRのSNRsとCNRsは、hybrid-type IRと比較し有意に高かった。また腹部大動脈と腹腔動脈について、DLRのSNRsとCNRsはMBIRと比較し有意に高かった。放射線科診断専門医による腹部主幹動脈の描出能の評価において、maximum intensity projection(以下 MIP)での全体像では、DLR、MBIRはhybrid-type IRと比較し有意に高値であった。また左右肝動脈と胆嚢動脈の描出能は、DLR、MBIRはhybrid-type IRより有意に高かった。これらの結果より腹部主幹動脈の描出能についてはDLRによる画像再構成が有用であることが示唆された。このことは海外学会で報告予定である。 TACEを施行した症例については、超高精細CTのdynamic CTの画像データとDSAの画像データの両者で、AI併用vessel navigation systemを使用し、feeding arteryの検出を試みたが、DSAの画像データでの結果の方が良好であった。これはdynamic CTでの腫瘍の造影効果やfeeding arteryの造影効果の他、AIのアルゴリズムが大きく影響していると思われた。今後vessel navigation systemのAIの改良が必要であることが示唆された。
|
Strategy for Future Research Activity |
HCCに対する新たな免疫チェックポイント阻害薬および分子標的薬の登場により、TACE治療対象症例は減少傾向であるが、肝臓もしくは膵臓の悪性腫瘍の術前の腹部dynamic CTのデータを使用することで、当初予定していた腹部造影CTデータの症例数を確保することが可能である。また悪性腫瘍のみならず、肝血管腫や限局性結節性過形成、肝細胞腺腫などについても手術適応となる症例が存在するため、このような良性疾患を含めることでより多くのデータを収集することが可能である。 またTACE施行時のDSAの画像データが不足することとなるが、TACE以外にも悪性腫瘍術前の血管塞栓術や肝動注リザーバー療法のために、カテーテルによる血管撮影を行う症例が存在するため、これら症例についても検討の余地がある。 またCOVID-19の影響によりCT phantomの納入に遅れが生じたため、当院放射線部にある従来型のCT phantomにてUHR-CTデータを取得した。今後流体力学用のCT phantomなどを用いることで、腹部dynamic CTのプロトコールによる腹部主幹動脈の描出能の更なる向上を目指す。加えて画像データの拡大再構成や再構成間隔の最小化などを応用することで、vessel navigation systemのAIによるfeeding arteryの検出能の向上を目指す。AIのアルゴリズムについてもいくつか改良が必要であることが示唆されているため、問題点をキヤノンメディカルシステムズ社にfeed backし、AI自体の改良を行う必要がある。 またTACEを施行した症例については、feeding arteryの同定能および同定率の解析のみならず、follow upの画像データから治療効果判定を行うことを目標とする。
|
Causes of Carryover |
GAMMEX社製Multi-energy phantomを初年度購入予定であったが、COVID-19の影響により納入に遅れが生じてしまうことがわかったため、当院放射線部が保有しているThe Phantom Laboratory社製Catphan-600 phantom CTP528 modelのみを使用して、超高精細CTの指摘撮像法の開発を行った。しかし初年度に策定した腹部dynamic CTのプロトコールを用いた超高精細CTによる腹部dynamic CTの画像でも肝細胞癌のfeeding arteryの同定率があまり高くないことがわかったため、次年度では流体力学用のCT phantomやartificial intelligenceを導入した新たなCT撮像プロトコールの策定が必要であることが示唆される。このため流体力学用CT phantomや高性能PCの購入を検討している。他に超高精細CTの画像データ表示用の高画素を有する高精細モニターについても必要に応じて購入を検討している。
|