2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of radiotherapeutic sensitization using extracellularly implanted gold anchors
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21K15779
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
長野 拓也 東京医科歯科大学, 東京医科歯科大学病院, 助教 (80792019)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 体内留置金属 / 金マーカー / 放射線増感剤 / PHITS / モンテカルロシュミレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
放射線治療に使う体内留置金属メーカーの株式会社メディキットと本学で共同研究契約を結び、金板を作成した。金板は純金、Auでできており、正確に加工するため、田中貴金属工業に外注した。 また、Auだけでなく、Auと原子番号が近く、加工が容易で安価な鉛(Pb)を用いて、腫瘍細胞と金属に治療に用いられる直線加速器からX線(4, 6, 10MV)を照射し、金属の周囲で腫瘍細胞がどの程度、線量増加や低減を認めるのか評価した。 厚さ2mmに加工したAu、Pbの円板をDishの下に置き、鉛直上からX線を照射し、後方散乱した放射線が腫瘍細胞に与える影響について様々に評価した。コロニーアッセイ、2Gy照射時の二重鎖切断(DSB)のFocciの定量、Fucciを導入されたHeLa細胞における4Gy照射時のG2 arrestされる時間の定量を行った。また、モンテカルロ物理シミュレーションソフトであるPhitsを用いて、この実験系をシミュレートし、金属周囲の線量がどのように変化するか計算を行った。 金属と腫瘍細胞の間にはDish底面があり、そのプラスチック底の厚みは1mmである。金属との距離1mmにおけるコロニーアッセイで、金属とコントロールの生存割合の差を認めた。同様に、DSBによるFocciの数や、G2 arrestされる時間でもコントロールとの有意差を認めた。Phitsにおける1mmの距離おける線量増加量は120%であった。 物理シミュレーションでの線量増加と、生物学的効果から推測される線量増加は同等であった。物理シミュレーションを用いれば、体内の金属と光子が反応して得られる照射線量の増加、低減は、金属の形状、金属の厚み、原子番号がわかれば正確に予想できると考えられる。体内に留置された金属を照射する場合、たとえ、金属マーカーが腫瘍内部にあっても、計画通りの照射することは可能であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
メディキットと共同研究、また、田中貴金属工業と秘密保持契約を結んで金板を作成したが、ふたつの企業と大学との文章をやり取りすることで、予想以上に金板の作成に時間を要してしまった。ただ、予備実験でPbを用いた実験をすでに行っており、その実験結果と金板は同じ結果であったため、概ね順調に研究結果が得られた。 一方で、金板との距離を1ミリ未満にするために様々な底面のDishを用いて、プラスチック製のDishと比較して実験を行ったが、Phitsで予想される線量増量を得ることができなかった。HeLa細胞とDish底面の接着や底面の素材の原子量、密度による交絡因子を排除できず、特殊な底面を有するDishでの実験は困難であった。 また、二年目に予定されていたマウスを用いた実験であるが、病院内に設置されている治療加速器を使って、動物実験用マウスに照射することができなくなってしまった。これは医療用の機械を使って動物実験してはならないという規則による。よって、マウスを用いたin vivoの実験は断念せざるを得ないことになった。 これまでの研究結果は、日本放射線治療学会の生物部会において、発表する予定である。また、追加の実験を行ったあと、論文作成し、投稿する方針である。
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Strategy for Future Research Activity |
in vitroでの結果ではあるが、金属とその周囲の放射線による影響を生物学的に示すことができ、それをモンテカルロシミュレーションで再現することができた。 これまで金属が照射範囲に含まれるような治療計画は敬遠されてきたが、今回の結果により、モンテカルロシミュレーションであれば、正確に予想する事が可能になることが示唆された。 一方で、モンテカルロシミュレーションで様々な金属の形態、厚み、密度、原子量で計算を行った結果、放射線の線量増量が得られる範囲は金属からの距離2ミリ未満であった。また、線量増加が得られる金属の厚みは2ミリで極大であることがわかった。球体やコイル状の体内留置金属では厚みがないため、後方散乱される電子の数は無視できるレベルであり、金属周囲の増感範囲をコントロールするのは難しいことがわかった。 金属周囲の線量増加と遮蔽を利用した新しい放射線治療を研究する目論見であったが、上記の結果を経て、方針を転換し、金属があっても影響をいかに治療計画に与えないかについての研究がメインになってくると思われる。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス流行のため、国際学会渡航が制限されたため使用額が少なかったが、2022年度は正常化し、学会発表も可能になる思われる。このため、次年度に持ち越し、学会活動に利用する。
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