2021 Fiscal Year Research-status Report
Analytical study on blood flow factors for reduction of vascular stenosis of AV fistula of hemodialysis patients
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21K15838
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
木下 知 東北大学, 大学病院, 特任助手 (00836538)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | シャント狭窄 / wall shear stress / computed fluid dynamics / 吻合角度 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在34万人も患者をもつ人工血液透析の現場でで頻発するシャント吻合部狭窄は、非常に深刻な課題である。「鈍角吻合シャント形状」を維持することでWall Shear Stressを低減できれば、狭窄を低減できると予想でき、それによりPTA手術(バルーン拡張による狭窄治療手術)、それに伴う患者の苦痛および医療従事者のシャント狭窄管理を低減することが可能になる。 それを実現すべく本年度は、透析患者情報より狭窄及びその要因であるWall Shear Stressに影響する血管形状因子を抽出し、それぞれがどのようにWall Shear Stressの変化をもたらすかを調査した。なお、WSS値は血管造影データより血管半径と流速を抽出し、円管内層流におけるWSS計算式(τ=4μu/r、τ:WSS、μ:粘度、u:平均血流速、r:血管断面半径)に代入して算出しシミュレーションソフトはCCOMSOLを用いて行った(東北大学流体科学研究所協力)、患者情報に関しては、むつ総合病院泌尿器科百田匡毅医師の協力のもと扱った。その結果、透析シャントに発生するwall shear strssの範囲がわかり。また吻合部付近で異常値がみられ、シャント狭窄頻発領域と一致することも判明した。 さらに、東北大学医学部付属動物実験施設において、東北大学病院心臓血管外科とともに動物実験を行い、ビーグル犬を用いて、大腿動静脈にてシャントを作製し、造影CT撮像を行った。その結果、生体内においてもシミュレーション同様のwall shear stress分布が見られ、従来のシャント形状では吻合部付近で異常なwall shear stressが発生していることが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記成果内容でも記述したとおり、2021年度前期の研究目標「透析シャントデータの収集およびwall shear stress算出」については、むつ総合病院泌尿器科および東北大学流体科学研究所の協力のもと、透析シャント狭窄の要因とされる血管パラメータの抽出およびシャントのwall shear stressの算出を行うことができたため、達成できたと言える。 また、2021年度後期の研究目標「wall shear stress値妥当性検証用動物実験」については、東北大学病院心臓血管外科とともに実施した動物実験により、前期で扱った患者シャントのwall shear stress分布が生体(ビーグル犬)内でも再現できていることが確認されたため、達成できたと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度研究成果を用いて、予定通り2022年度は「wall shear stressが正常範囲となる鈍角吻合シャント形状特徴の抽出」を行う。具体的には、前期目標を「流体シミュレーションによるwall shear stress正常範囲となるシャント形状特徴の抽出」とし、2021年度前期研究で得られたwall shear stree変化に関与する血管パラメータを用いて、シャント内のwall shear stressが正常範囲となるような新しいシャント形状を提案する(=血管パラメータの最適化)。また、後期目標を「生体を用いた有効性確認」とし、2021年度後期同様、ビーグル犬を用いて東北大学病院心臓血管外科とともに動物実験を実施する。また、鈍角吻合のシャント形状を生体内で自然に維持することは不可能なため、本研究では比較的作製が容易で生体適合材料を用いてその形状を維持するデバイスの試作品を作製する。それをビーグル犬に装着・留置することで慢性期実験(約40日間飼育)を行うことで、有効性の確認を行う予定である。
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Causes of Carryover |
動物実験において実験動物購入代・飼育費用が必要になる予定だったが、歯学研究科研究者が使用したビーグル犬を共同利用したためその費用が抑えられた。更に、透析専門医への相談にかかる旅費は、オンラインによる実施で費用が発生しなかった。次年度の使用計画として、研究補助スタッフの人件費や定期的な専門指導を頂ける医師への謝金、学会参加など研究をより推進させるための費用として当てることとする。
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