2021 Fiscal Year Research-status Report
トモシンセシスを用いた新たな大腸癌深達度診断法の確立
Project/Area Number |
21K15848
|
Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
伊藤 高広 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (60285369)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | トモシンセシス / 大腸癌深達度診断 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の目的は低被曝線量で重なりのない高精細断層X線撮影が可能な技術として注目されているトモシンセシス(断層撮影)を用いた大腸癌の深達度判定の検討である。特に内視鏡治療と外科的治療の境目となるT1b(SM浸潤距離1000ミクロン以上)の判定は治療方針決定の上できわめて重要である。内視鏡診断が高度に進歩した現在においても内視鏡のみでは診断に迷う例が少なくないことが知られており、大腸癌治療ガイドラインにも内視鏡診断以外の方法として古典的注腸X線診断を用いることが記載されている。ただし、その検査手技・診断には熟練を要し、かつ受検者の身体能力が求められる内容であり、高齢化が進んだ現在、撮影には制約がかかることが多く、低侵襲な検査により詳細かつ簡便な診断が可能となりうることが求められている。 今回の検討は当院消化器外科で手術が施行され、病理組織学的にT1b大腸癌と診断された患者を抽出し、注腸造影・トモシンセシスを行った例を研究対象とした。対象群のトモシンセシス撮影画像について2名の放射線科医により後方視的にX線所見を検討した。検討項目として側面変形が最も表れている箇所について、水平長と垂直長、それらがなす角度を測定し、古典的X線診断における側面変形(「変形なし」・「角状変形」・「弧状変形」・「台形状変形」)の判定・オリジナル画像とトモシンセシス画像の差異の評価を行った。今後計測した値と病理所見上のSM浸潤距離の間の相関係数につき検討し、側面変形に関する深達度判定基準の確立を目指す。 また、これらの基礎となるファントム実験についても計画する。概要は、大腸癌症例のCT画像から得られたvolume dataを元に3Dプリンターを用いて大腸癌ファントムを作成し、トモシンセシスを撮影し、その画像所見と手術症例における病理組織所見との対比を行い、適切な診断基準について検討する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は当院で三次元画像処理を担当する放射線技師と共同で3Dモデルを作成し、ファントム実験を行って仮の診断基準を決定する予定であったが、COVID-19感染症拡大の影響により様々な制限が加わったこと、当初の想定よりも適切な症例が得られないことより断念し、臨床例のみの検討に切り替えて研究を遂行している。ただし、今後COVID-19感染症の状況によりファントム実験の再開を検討している。
|
Strategy for Future Research Activity |
臨床例における深達度判定のためのトモシンセシスによるX線所見の解析結果をもとにカットオフ値を決定し、新たな基準のもと放射線診断医による読影実験を行い、診断精度、診断者間の一致率などその妥当性について評価を行う。今後COVID-19感染症の状況によりファントム実験の再開も検討しており、施行できた場合にはその結果を踏まえて分析を行った上で作成した基準による読影実験を行う。
|
Causes of Carryover |
COVID-19感染症の拡大などにより当初の予定内容を当該年度内に施行できなかったため、次年度にあらためて再検討を行うこととしました。
|