2022 Fiscal Year Research-status Report
末梢血トランスクリプトームの外れ値解析:エクソーム解析の限界を超えるアプローチ
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21K15873
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
山田 茉未子 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (60835601)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | トランスクリプトーム解析 / スプライシング / キメラ遺伝子 / 偽エクソン形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
従来のエクソーム解析ではゲノム構造異常やスプライシング異常の検出は困難で、その克服が課題であった。末梢血に発現しているトランスクリプトームに着目し、網羅的な転写産物の質的・量的検出により、これらを惹起するゲノム異常を特定することを目的とした研究である。 昨年同定したSpliceAIの有効なカットオフ値=0.7というデータを活かして、 本年度は ①RNA解析でPTEN遺伝子のdeep intronバリアントを検出した。患者はタンパク漏出性胃腸症・難治性腹水を伴う患者でありCowden症候群と診断した。この研究は診断のつかない新生児・乳児に対して適切な診断を付けることで適切な管理に結びつけるためのものであり、本結果も患者の医療管理に有益な情報となった。 ②WDR45遺伝子の深部イントロン変異によって生じている脳の鉄沈着を伴う神経変性疾患(Neurodegeneration with brain iron accumulation: NBIA)について、RNA解析を行った結果、偽エクソン形成を伴う、異常なトランスクリプトが生成されていた。偽エクソン形成を正常なスプライシングへ誘導する手法として、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)が知られており、本症例に対する検討を行った。本患者の変異に対して作成した、特異的なASOを変異を導入した神経細胞に導入した結果、治療効果の期待されるASOを同定することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
異常スプライシングを起こす具体的な遺伝子変異の同定ができていること、また、偽エクソン形成に対する治療が期待されるアンチセンスオリゴヌクレオチドの同定ができていることなど、スプラシング異常を是正するメカニズムの解明への展望が開けてきているため。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究により、異常スプライシングを高率に検知可能なSpliceAIカットオフ値が0.7と定まり、昨年度はその成果を活かして、deep intron variantによる疾患原因遺伝子を同定した。本年度はさらにRNA解析結果に対して得られたカットオフ値を用いて有意なバリアントを抽出し、全ゲノム解析データと突き合わせ、スプライシング異常を引き起こす新たなゲノム異常の同定を効率的に進めると共に、治療に有用な可能性のある核酸医薬研究も平行して進めていく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの拡大により、学会開催がオンライン中心となったことや、海外学会への参加を取り下げたことから、予定していた参加費・旅費の支出がなかった。また患者の来院数も減少したことから、研究期間を延長し、研究対象患者のリクルートを継続することとした。 次年度もSplice AIのカットオフ値の適正値を用いて異常スプラシングを起こすゲノム変化を効率的に同定し、更に全ゲノム解析の ショートリードあるいは構造異常や繰り返し配列でのゲノム変化が想定される場合にはロングリードシーケンシングによる解析を追加した解析を行うほか、治療に結びつく可能性のある核酸医薬研究も平行して行う。
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