2021 Fiscal Year Research-status Report
アデノ随伴ウイルスベクターの特異的ターゲティングによる新規遺伝子治療法の開発
Project/Area Number |
21K15875
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
塩澤 裕介 日本医科大学, 医学部, 助教 (60801511)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 遺伝子治療 / ウイルスベクター / ターゲッティング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、抗体にアダプターを付与し、これを介して抗体とAAVカプシドを間接的に結合させるシステムの開発を目指している。アダプターとして、1)ヘテロ二量体化するよう設計されたcoiled-coilドメイン、と2)分子A(知財申請中のため詳細を伏せている)の二つを試した。まず、高親和性の一本鎖抗体(scFv)が知られているHER2を表面抗原のモデルとし、以下の通りベクターシステムの構築を進めた。 1)AAVカプシドへの変異導入:AAVベクターによる非標的細胞への遺伝子導入を防ぐため、カプシドタンパク質に変異を導入し、細胞表面の受容体と結合できないようにした。 2)coiled-coilドメインをアダプターとするベクターシステムの構築:互いに特異的に会合するよう設計されたcoiled-coilドメインのペアを用いることとし、一方のモノマーをHER2に対するscFvに、もう一方をカプシドタンパク質であるVP2に挿入した。改変したVP2を含むAAVベクターの作製を試みたが、改変VP2はベクター粒子にうまく組み込まれなかった。VP2の改変により分子構造が大きく変化し、ベクター粒子に組み込まれなくなったと考えられた。 3)分子Aをアダプターとするベクターシステムの構築:分子Aが実際にAAVカプシドと結合することをプルダウンアッセイで確認した後、HER2に対するscFvとつなげ、分子A付きscFvを作製した。 4)HER2を強発現する乳がん細胞株SK-BR-3に、分子A付きscFvとAAVベクターを投与し、遺伝子導入効率を調べた。分子A付きscFvを加えなかったときはほとんど遺伝子導入が見られなかったのに対して、これを加えたときは野生型のカプシドを持つAAVと同程度の遺伝子導入効率が得られた。これにより、AAVベクターの標的指向性を改変するための原理を確立できたと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
令和3年度に予定していた研究目的を達することができ、令和4年度に予定していた研究まで進めることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
カプシドを改変していないAAVベクターと比して標的特異性が向上しているかを検証するため、マウスの肝臓への遺伝子導入を行う。肝細胞マーカーであるASGR1に対するアダプター付きscFvと、ルシフェラーゼを発現するAAVベクターを作製し、経静脈的に投与する。その後、経時的にルシフェリンを投与して生体内での発光を撮像することで遺伝子導入部位と発現量を明らかにし、肝臓への特異性を評価する。
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Causes of Carryover |
消耗品については、すでに研究室で保有していたものを効率的に使用することで支障なく実験を進めることができた。その結果、新たに購入する物品を最低限に抑えることができた。また、雇用していた実験補助員1名の人件費を拠出させていただく予定としていたが、その者が年度途中で退職してしまった。そのため、その分の人件費が必要なくなってしまった。こうした予定変更はあったが、研究計画で予定していた以上に研究の進展が見られており、結果として研究の遂行には大きな影響を及ぼさなかった。旅費については新型コロナウイルス感染症の流行の影響が大きく、予定していた学会出張がなくなってしまった。 次年度は実験動物を用いた性能評価にうつる予定としており、その購入や飼育のための費用の拠出を見込んでいる。また、実験補助員1名を雇用する予定としており、その分の人件費の使用を予定している。
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