2021 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of pathophysiology and development of new treatments for attention deficit hyperactivity disorder focusing on microglia
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21K15882
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
城賀本 敏宏 愛媛大学, 医学系研究科, 助教 (10781346)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ADHD / LHR / PrL / ミクログリア / クレンブテロール |
Outline of Annual Research Achievements |
①ADHDの多動性、衝動性、不注意はPrLの神経細胞の過剰活動に関連するか。:Lister hooded rat (LHR)とWistarの前頭葉内側部前辺縁皮質PrLにおける遺伝子発現をNGSにより網羅的に調べた結果、神経細胞活動のマーカーとして知られるcFos mRNAの他、Egr2やArcのようなImmediate early genesの発現が亢進していることが明らかになった。 ②ADHD治療薬のアトモキセチン・グアンファシンはPrL神経細胞のc-Fos発現を低下させるか。:アトモキセチン投与により、cFos発現は減少した(ウエスタンブロッティングによる)が、グアンファシンは影響がなかった。 ③ 脳内ミクログリアの活性低下は、造血系での骨髄系細胞の活性または増殖システムの異常に根本的な原因があるか。:LHRとWistarラット前頭葉のミクログリアの活性や細胞数について、FACSと免疫組織化学により分析した結果、LHRではミクログリア細胞数がやや少なく、ミクログリアの貪食能に関わるCD11bの発現が低下していることが判明した。さらに両者の末梢血をCD11bとCD45に対する抗体を用いてFACSで分析したところ、LHRでは末梢血中のリンパ球が多く、顆粒球・単球が少なくCD11b発現レベルも低いことが明らかになった。 ④ 脳内ミクログリア活性を上昇させることで、ADHD様行動障害が改善するか。:β2アドレナリン受容体作動薬であるクレンブテロールの投与により、前頭葉のフローサイトメトリーにおいて、クレンブテロール投与群でマイクログリアのCD11b発現とFS、SSが有意に増加し、マイクログリアの活性化が確認できた。さらに、クレンブテロールを投与し行動実験を行ったところ、クレンブテロールはLHRの不注意、衝動性といったADHD様行動を有意に改善した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記①②③については、研究目標は概ね順調に達成し、現在論文作成準備中である。④については、喘息の治療薬としても使われており安全性も高いクレンブテロールが、LHRの多動や不注意行動の改善につながることが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
【養育環境とADHDとの関連の検討】 ADHDなどの行動発達障害は、近年世界的に増加している。我々は、少子化や子供をより安全に育ってようとする風潮がその増加の背景にあるとの仮説を立て、落下の危険性もある4つのフロアを持つ大きなケージで、LHR 12匹の集団飼育を行った。このような立体集団飼育を行うとLHRの多動、不注意、衝動性を抑制することができた。また、前頭前野のシナプスは行動の改善に伴って減少していた。これらのLHRでは、副腎重量が増加しており、軽度のストレスが負荷される養育環境であると考えられた。子供に一定のストレス負荷を与えることが、ADHDの発症を予防できる可能性を示唆する結果となった。今後、立体集団飼育LHRのミクログリアの変化についても検討を進める予定にしている。
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Causes of Carryover |
申請書提出までに購入していた物品で一部研究がすすみ、申請していた物品費用を一部解析費用として利用させて頂いたためと、コロナ感染症の影響で必要なくなった旅費も、解析費用として利用させて頂いたため、申請書の研究費の使途と実際が異なることとなった。今後、立体集団飼育LHRのミクログリアの変化についての研究費用に使用する予定である。
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