2022 Fiscal Year Research-status Report
光療法は神経毒性をもたらすか?ビリルビン光学異性体と血液脳関門モデルを用いた研究
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21K15886
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
内田 優美子 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (70319721)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 血液脳関門モデル / 早産児ビリルビン脳症 / ルミルビン / 細胞毒性 |
Outline of Annual Research Achievements |
新生児黄疸に対する光療法の有効性は既に実証されている。その一方、光療法に伴う超低出生体重児死亡率の増加や早産児のビリルビン慢性神経障害などが問題となっている。そして、これらを避ける方法は未だ解明されていない。また、近年、安全と目されてきた光療法の結果産生されるビリルビン光学異性体(ルミル ビン)による神経炎症惹起性が示唆された。このビリルビン光学異性体は水溶性で神経親和性がほとんどないとみなされていたことと精製分離が困難なことから 脳神経系への作用についての詳細な研究が進んでいない。 そこで、光療法による血液脳関門への傷害を検証する目的で検討を始めた。 日齢8の幼若Wister ratの脳毛細血管内皮細胞で構成した血液脳関門モデルを作成し、①ルミルビンの脳内移行性試験、②ルミルビンの細胞毒性試験(Cell Counting Kit-8; CCK-8)を施行した。ルミルビンはビリルビン試薬に青緑色照射して精製したものを使用し、最終濃度が10, 25, 50μMになるよう、また、対照としてZZ-ビリルビン(非抱合型ビリルビン)50μMを調製した。①脳内移行性試験では、ルミルビン25、50μMのみが濃度移行性に移行していた。対照のZZ-ビリルビンは移行しなかった。ルミルビン精製時に用いたメタノールが残存し、それがバリアーの破壊に関与した可能性を考慮し、使用したルミルビン液中のメタノールを測定したが検出されなかった。また、②の細胞毒性試験においては、ルミルビン50μMのみで低値を示し、viabilityの低下が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度施行した、幼若ラットにおける血液脳関門モデル試験においてルミルビンが高濃度であれば、血液脳関門を通過する可能性があることがわかった。しかしながら、臨床的に早産児において黄疸の光療法中あるいは治療後にこのような高濃度に曝されているか知られていない。そこで、予備調査として、血液中のルミルビンを測定する簡便な方法について試行していた。
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Strategy for Future Research Activity |
実際の早産児における血中ルミルビン濃度の測定、および血液脳関門モデルを用いた実験の遂行。
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Causes of Carryover |
本来2022年に行うはずだった血液脳関門モデルの作成を遅らせたため。その理由はパイロット的に施行した血液脳関門モデルにおいて予期せぬ結果を得たからである。再度血液脳関門モデルでの実験を行う前に、臨床現場における早産児の血中ルミルビン動態の把握が必要であると考え、その課題に取り組んでいたため。今年度は、早産児の血中ルミルビン濃度動態をしらべ、臨床の実際に合わせたルミルビン濃度で再度血液関門モデルの作成を行う予定である。
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