2021 Fiscal Year Research-status Report
知的障害責任分子Rac3の大脳発達における生理機能と分子病態機構の解明
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21K15895
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Research Institution | Institute for Developmental Research Aichi Developmental Disability Center |
Principal Investigator |
西川 将司 愛知県医療療育総合センター発達障害研究所, 分子病態研究部, リサーチレジデント (00871758)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 知的障害 / 神経発達 / シグナル伝達 / 細胞骨格 / G蛋白質 / Rhoファミリー / Rac |
Outline of Annual Research Achievements |
RAC3は、細胞形態・運動制御を司るRACサブファミリーのうち、脳に高発現するサブタイプである。最近我々のグループは、RAC3 遺伝子変異が、皮質形成異常を伴う知的障害(ID)の原因となることを同定した。すなわち RAC3は脳構造形成・神経細胞発達に必須の役割を果たすことが確実視される。しかしながら、RAC3 が神経発達で果たす役割は不明で、変異によるIDの発症メカニズムも未解明である。そこで本年度は、マウスRac3 の中枢神経組織における発現プロファイルを抗 Rac3 抗体を用いて解析した。Rac3 は大脳皮質に比較的強く発現しており、発現量が発達依存的(胎生14日から生後30日)に変化することが判明した。また、成獣脳組織を生化学的に分画して得たシナプス小胞画分とシナプス後膜画分に、Rac3も濃縮されていることもわかった。海馬初代培養神経細胞における発現解析では、培養3日目で軸索に強く局在し、培養7日目では細胞質と樹状突起上にも発現していた。さらに、培養14日目では、興奮性シナプス前膜マーカーのSynaptophysin、後膜マーカーのPSD-95と部分的に共局在していた。免疫組織染色法による発現解析では、生後2、18日目の脳梁・大脳皮質・海馬領域の軸索束に強い染色が認められた。これらの結果から、Rac3 は神経細胞の軸索・樹状突起・シナプス形成に寄与することで、神経回路ネットワーク形成に関与する可能性が示された。現在、IDの原因となるRAC3変異体の性状解析・病態解析を行なっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
特異抗体を用いたマウス神経組織のRac3発現解析を学術論文として発表した。さらに、RAC3変異体の病因シグナル(神経細胞の移動障害)も解明しつつあり、RACシグナルの制御破綻は神経疾患の原因となるという概念 "Neuro-RACopathy" を提唱した。これらのことから、当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、神経発達過程におけるRAC3変異体の病態解析を進めていく。具体的には、マウス子宮内胎仔脳電気穿孔法を用いてRAC3変異体を発現させ(病態の模倣)、RAC3変異体が神経細胞の増殖・移動(皮質形成)・分化(軸索、樹状突起、シナプス形成)の何れの発達過程を障害するか、その病因シグナルはないか、詳細に調べる。さらに、神経細胞の形態異常・ シグナル異常の改善を指標に治療薬・治療方法のシーズを得たい。また、ノックダウン実験を行うことで生理機能も明らかにしたい。
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Causes of Carryover |
web開催の学会が多く、旅費が抑えられたことで次年度使用額が生じた。使用計画としては、最終的に研究を発表するための掲載料、2022年度の学会旅費に使用する予定である。
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Research Products
(9 results)