2022 Fiscal Year Research-status Report
オンチップ血管網を用いたSturge-Weber症候群モデル構築と発症機序の解明
Project/Area Number |
21K15909
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
坂野 公彦 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (40865630)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 血管内皮細胞 / 1細胞解析 / 灌流 / スタージ・ウェーバー症候群 / iPS細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、ゲノム編集技術を用いて作製したスタージ・ウェーバー症候群モデルiPS細胞を用いて、①オンチップ血管網作製技術、および灌流システムを構築することで、詳細なスタージ・ウェーバー症候群モデルを樹立し、②本症候群における血管奇形発症の病態に関与する遺伝子・遺伝子経路の探索を行うとともに、③正常、および様々な疾患の血管網に対して、灌流刺激がもたらす生理機構や、病態形成機構を解明することを目指している。 2022年度は、スタージ・ウェーバー症候群モデルiPS細胞および正常コントロールiPS細胞から作製した血管網構成細胞を用いたシングルセルRNAシークエンスについての詳細解析を行った。具体的には、各iPS細胞を、微小PDMSデバイスにおいて血管網を作製させたのち、デバイス上で培地の灌流を行った群と灌流を行わなかった群のサンプル(計4サンプル)について、血管網構成細胞を分散処理したのち、10x Genomics ChromiumによりcDNAライブラリーを作製し、イルミナ社のNova-seqを用いてシークエンスを行った。シークエンスの品質管理としては、1細胞あたりのリード数は十分確保されており、ミトコンドリア遺伝子の発現割合や1細胞あたりの発現トランスクリプト数をもとに閾値を設定し、以降の解析に用いる細胞を選別した。UMAP plot・Feature plot・violin plotの作製、 並びに各クラスターで有意に発現の高い遺伝子(DEG)を抽出することができ、その結果、SWSの灌流群で特異的に変化する複数の遺伝子を同定することができた。さらに、同定された遺伝子産物の免疫細胞染色を開始している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は、前年度終了直前に提出したシングルセルRNA解析の品質をチェックし、詳細解析に資する結果が得られていることが確認できた。また、バイオインフォマティクスを用いた解析を進めることができ、疾患群に特徴的な発現変化をきたす複数の遺伝子を同定することができた。さらに、それらの遺伝子発現を確認するため、微小チップ上での免疫細胞染色を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、シングルセルRNAシークエンスの詳細解析をさらに進めたい。得られた結果をもとに、スタージ・ウェーバー症候群モデルiPS細胞由来血管網に特徴的な表現型を、様々な手法を用いて画像評価を行うことで明らかにしたいと考えている。さらに、自身の血管網灌流実験の手法を用いることで、灌流が正常血管網に与える生理的な影響についても、疾患群との比較を通して、その知見を深化させたいと考えている。
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Causes of Carryover |
疾患の表現型の観察により適した微小デバイスの形状の決定や、シングルセルRNA解析の結果に基づいた免疫細胞染色用の抗体等の選定を行う必要性が生じたため、左記の消耗品の購入のタイミングが次年度となった。次年度において、当初の使用計画にこれら消耗品の購入を加える形で、使用したいと考えている。
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