2023 Fiscal Year Annual Research Report
Noonan症候群のPTPN11変異による心筋肥大の分子機序の解明
Project/Area Number |
21K15910
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
石崎 怜奈 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (70528299)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | Noonan症候群 / 肥大型心筋症 |
Outline of Annual Research Achievements |
Noonan症候群では最初に原因遺伝子として報告されたPTPN11以外にもRAS/MAPK経路に含まれるRAF1などが疾患原因遺伝子として同定されている。Noonan症候群の予後に影響する二次性心筋症では、全周性に心筋肥大が認められるRAF1変異例と比較して、自験例のPTPN11変異例では心筋肥大が心室中隔に限局し比較的軽症であったことから、疾患原因遺伝子の種類や変異の種類によって二次性心筋症の発症の有無や重症度に差が生じる可能性が示唆された。本研究では遺伝子型による臨床表現型の差異の分子的機序を解明することを目的とした。 自験例である二次性心筋症症例のPTPN11遺伝子変異Xと、心筋症発症例がほぼ無い既報のPTPN11遺伝子変異Y、および野生型PTPN11遺伝子を挿入したアデノウイルス発現ベクターを構築した。それぞれのアデノウィルスベクターをラット新生仔心筋細胞(NRCM)に過剰発現させ、細胞レベルで表現型を比較検討した。野生型PTPN11を発現させたNRCMでは正常のサルコメア構造を呈するのに対して、2種の変異型PTPN11(X,Y)を発現させたNRCMではともにサルコメア構築の乱れを認めていた。さらに、心筋症型である変異型XのPTPN11を発現させたNRCMを野生型と比較すると、心筋細胞面積が有意に小さくなり、特にX陽性NRCMの生存数が減少するという結果を得、Xの強制発現がNRCMの細胞構築と生存に関与する可能性が示唆された。これらの結果の再現性を得るためにアデノウィルスを再増幅と精製をおこなったが、NRCMへの感染効率が低下した。今後は、検討に必要なウイルス量を確保したのちに表現型の再現性を確認し、さらに下流候補シグナルの活性を検討していく予定である。
|