2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K15917
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
坪井 真代 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (40895421)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 腸上皮化生 / 胃癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では胃癌における慢性胃炎、腸上皮化生から胃癌への変化に必要な分子学的機序の解明を試みている。まず、既存マウスモデルとT1-Cdx2マウスの遺伝子発現・免疫プロファイルの比較に関しては、以前作成した腸上皮化生モデルは他の胃炎モデルと異なり、SPEMではなく、MUC2陽性の腸上皮化生を来していた。今回、RNAシークエンスで、遺伝子発現レベルを解析したところ、新規に作成したT1-Cdx2マウスとT1-KrasCdx2マウスの胃粘膜ははの胃炎モデルとは異なり、腸管粘膜に遺伝子発現パターンが類似していることがわかった。これらの胃炎マウスモデルの免疫応答に注目したCyTOF/FACS解析では、ピロリ菌感染マウスモデルとIL1βを過剰発現したマウスモデルでは獲得免疫応答が著明に活性化し、B細胞、樹状細胞、T細胞が増加しているのに対して、腸上皮化生マウスモデルでは大きな活性化は確認されず、免疫応答は腸上皮化生に重要な要素ではないと考えられた。胃体部腸上皮化生発生過程におけるRas/MAPK経路活性化の意義と機序解析においては、胃底腺を構成する幹細胞とされるLgr5陽性の主細胞にCDX2を発現する、マウスを作製したところ、リコンビネーション効率の関係か、まだらに前庭部にCDX2の発現と腸上皮化生を認めた。このマウスを経時的に経過を追っても、CDX2発現や腸上皮化生が進展していかなかった。このマウスでもKras変異を導入すると壁細胞が消失し、胃体部に腸上皮化生が生じた。そこで、Kras変異を導入せずに、腸上皮化生マウスを作る目的で壁細胞の選択的アブレーションマウスをT1-Cdx2に掛け合わせた。このマウスでも胃前庭部に腸上皮化生をきたしたが、体部の腸上皮化生は誘導できなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
既存マウスモデルとT1-Cdx2マウスの遺伝子発現・免疫プロファイルの比較に関しては、RNAシークエンスとCyTOF/FACS解析を行い、各胃炎マウスモデルの特徴が遺伝子発現レベル、免疫応答レベルで解析できている。 胃体部腸上皮化生発生過程におけるRas/MAPK経路活性化の意義と機序解析においては、腸上皮化生マウスを作る目的で壁細胞の選択的アブレーションマウスをT1-Cdx2に掛け合わせた。このマウスでも胃前庭部に腸上皮化生が発生することを確認しえた。 ゲノム編集オルガノイドを用いた腸上皮化生発生メカニズムの解析に関してはin vitro での腸上皮化生の誘導はCrispr/Cas9システムが機能しなかったため、LSL-CDX2マウスに胃前庭部レンチウイルスベクターを感染させ、Wint,EGF,FGの有無でのMUC2やCDX2の発現の比較などを行ったが、経時的にcdx2発現が減少してしまい、定量、評価が困難であった。
|
Strategy for Future Research Activity |
胃体部腸上皮化生発生過程におけるRas/MAPK経路活性化の意義と機序解析においては、萎縮の定義である、壁細胞の減少に類似した、壁細胞消失マウスを作製したが、それだけでは腸上皮化生は来さないことがわかった。今後、予定の通り、Ras/MAPK経路阻害剤・刺激剤を投与し、本経路の腸上皮化生発生に対する役割を検討する。またマウス胃組織からRNAを抽出してRNAシークエンスを行い、分化調節因子となる下流シグナルや標的遺伝子の同定していく。胃の幹細胞を標識するマウスであるLgr5-CreERTマウスとLSL-Cdx2マウスを用いた検討は現在進行途中であり、引き続き進めていく。
|