2021 Fiscal Year Research-status Report
大腸癌微小環境における治療標的としての線維芽細胞活性化機構の解明
Project/Area Number |
21K15922
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
吉井 俊輔 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座助教 (90771882)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 大腸癌 / 癌微小環境 / 癌関連線維芽細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、癌微小環境における癌関連線維芽細胞の活性化機構を解明することで、新たな治療標的分子を探索することを目的とするものである。その機構の一つとして線維芽細胞におけるアペリン-アペリンレセプター(APJ)経路の意義に着目して検討をすすめている。 結腸由来線維芽細胞株を用いたin vitroの解析にて、線維芽細胞APJ抑制が線維芽細胞活性化(線維化マーカー発現上昇、増殖因子発現上昇、遊走能上昇)を促進することを確認している。その細胞内機構として、線維芽細胞におけるTGF-β-smad経路が活性化しており、アペリン-APJ経路は線維芽細胞TGF-β-smad経路に対する抑制機構として働いている可能性を考えている。 また、線維芽細胞APJ抑制が共在する癌細胞に与える影響について検討を行った。具体的には大腸癌細胞をAPJ抑制線維芽細胞とin vitroにて共培養した際に、コントロール線維芽細胞に比してAPJ抑制線維芽細胞の癌細胞増殖能が亢進していることを確認した。また、免疫不全マウスを用いた検討にて、大腸癌細胞を線維芽細胞と共接種した際の腫瘍増大における線維芽細胞APJ抑制の影響を皮下接種モデルにて検討し、線維芽細胞APJ抑制の腫瘍増大促進作用をin vivoにても確認した。 さらに、線維芽細胞APJ発現を抑制するエクソソーム中のマイクロRNAをデータベースを用いて選定した。同定したマイクロRNAの機能解析を行い、線維芽細胞APJに対する抑制作用を確認した。また、癌細胞による線維芽細胞APJ抑制が、同定したマイクロRNAに対する特異的阻害剤により回復することも確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
結腸由来線維芽細胞株を用いたin vitroの解析にて、線維芽細胞におけりsmall interfering RNAを用いたAPJ抑制やAPJアンタゴニストの投与によって線維芽細胞の活性化(線維化マーカー発現上昇、増殖因子発現上昇、遊走能上昇)を促進することを確認している。同様に、癌細胞との共培養によっても線維芽細胞APJは抑制され、線維芽細胞が活性化することも確認した。その細胞内機構として、アペリン-APJ経路は線維芽細胞TGF-β-smad経路に対する抑制機構として働いている可能性を見出した。 また、このような線維芽細胞APJ抑制が共在する癌細胞に与える影響についてもすでに仮説に合致する結果を得ており、具体的には大腸癌細胞をAPJ抑制線維芽細胞とin vitroにて共培養した際に、コントロール線維芽細胞に比してAPJ抑制線維芽細胞の癌細胞増殖能が亢進していることを確認した。また、免疫不全マウスを用いた検討にて、大腸癌細胞を線維芽細胞と共接種した際の腫瘍増大における線維芽細胞APJ抑制の影響を皮下接種モデルにて検討し、線維芽細胞APJ抑制の腫瘍増大促進作用をin vivoにても確認している。 さらに、線維芽細胞APJ発現を抑制するエクソソーム中のマイクロRNAをデータベースを用いて選定した。同定したマイクロRNAの機能解析を行い、線維芽細胞APJに対する抑制作用を確認した。また、癌細胞による線維芽細胞APJ抑制が、同定したマイクロRNAに対する特異的阻害剤により回復することも確認している。 上記の通り、in vitro、in vivoの検討においておおむね順調に研究は進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
前述の通り、in vitro、in vivoの検討においておおむね順調に研究は進展していると考える。 今回同定したマイクロRNAにつき、大腸癌患者保存血清を用いて、同定したマイクロRNAの末梢血清中エクソソーム内発現量を測定し、バイオマーカーとしての意義につき検討を行う。 また、大腸癌切除検体を用いて、免疫組織化学染色法により大腸癌間質部のAPJ発現を定量化する。今回、大腸癌発生過程におけるp53変異との関連についても着目しており、癌細胞のp53染色結果との関連についても検討を行う。間質APJ染色結果とリンパ管侵襲や転移の有無などの臨床情報との関連についても検討を行う。 これら研究結果については学会発表や学術論文投稿を通して発表を行う。
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