2021 Fiscal Year Research-status Report
加齢による肝線維化進展促進に関わる新たな因子の同定とその分子学的メカニズム
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21K15983
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
西村 典久 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (40790324)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | CHI3L1 / 肝細胞 / 肝星細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
Primaryのヒト肝細胞、肝星細胞を培養し、各種実験を行った。まずヒト肝細胞を培養して回収し、細胞内のCHI3L1 mRNA発現を検討したところ、既報で発現がみられていない肝癌細胞株Huh-7ではその発現がみられなかったのに対して、ヒト肝細胞ではCHI3L1の発現を認めた。同様にこれらヒト肝細胞の培養上清を採取し、上清中のCHI3L1濃度を測定したところ、ヒト肝細胞のみCHI3L1蛋白の産生能が確認された。次にprimaryヒト肝星細胞を培養し、細胞内のCHI3L1発現の経時的な変化について検討した。Primaryの肝星細胞はplastic dishで培養を行うと自律的に活性化を誘導し、コラーゲンを始めとする多くのextracellular matrix蛋白を産生する事が知られている。今回の実験でも培養開始後3日目から肝星細胞内の活性化マーカーの上昇をみとめ、活性化していることが確認された。同時に肝星細胞内のCHI3L1mRNA発現レベルを測定すると、活性化が強く促進される培養後3-5日目ごろからCHI3L1の発現も急激に上昇することが明らかとなった。またCHI3L1発現量と並行して、培養上清におけるCHI3L1蛋白濃度も上昇を認めた。このことから肝線維化進展に重要な活性化型肝星細胞でCHI3L1産生が強く認められることが明らかとなった。したがって、ヒト肝臓内ではこれら肝細胞や活性化肝星細胞がCHI3L1を産生する主要な細胞であることが確認された。 またCHI3L1産生のトリガーの探索実験では、肝細胞ではIL-6、肝星細胞ではTNF-αがCHI3L1の発現および蛋白産生を促進した。IL-6やTNF-αは炎症性サイトカインに属しており、肝内炎症が出現した際によく産生される因子であることから、CHI3L1の発現は炎症によって惹起されることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞を用いたin vitroの実験系でCHI3L1産生のトリガーや各細胞での発現を確認することができた。これにより、CHI3L1が肝内炎症により惹起され、肝内でなんらかの直接的な役割を有していることが強く示唆された。これによりCHI3L1の分子学的作用についてさらに検討していくことの有用性が示されたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き細胞培養実験を行い、CHI3L1の肝細胞や肝星細胞における作用、およびCHI3L1の受容体の探索を継続する。生体内における肝線維化進展とCHI3L1発現の相関や作用についてヒト検体や動物実験などを用いて評価を行う。
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Causes of Carryover |
本年度は主として細胞による実験を行い、また解析用のサンプルの採取を主な目的とした。次年度は細胞や実験動物を購入し、解析を継続して行っていく。
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