2023 Fiscal Year Research-status Report
早期慢性膵炎診断基準のEUS所見に影響を及ぼす因子と病理学的意義の解明
Project/Area Number |
21K15984
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
関根 匡成 自治医科大学, 医学部, 講師 (90791103)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 早期慢性膵炎 / 超音波内視鏡(EUS) |
Outline of Annual Research Achievements |
当院での随伴性膵炎を伴わない遠位胆管癌に対して膵頭十二指腸切除術を施行した12例を用いて早期慢性膵炎のEUS像と病理所見との後ろ向きの検討をおこないました。EUS像と病理像の評価部位を一致させるために門脈と接している膵臓の短軸像を評価部位として用いました。早期慢性膵炎のEUS像として分葉エコー、索状もしくは点状高エコー、膵管境界高エコー、病理像として線維化、炎症細胞浸潤、腺房細胞の萎縮、膵管周囲の線維化による肥厚を評価項目に用いました。結果としては、分葉エコーは腺房細胞の萎縮と線維化と有意差を認めました。反対に索状もしくは点状高エコーはいずれの病理所見との有意差は認められませんでした。膵管境界高エコーと膵管周囲の線維化による肥厚とは有意差は認めませんでしたが、関連する傾向は認められました。この研究に関しては、2021年4月に Pancreasにacceptされました。 上記研究で分葉エコーは病理的にも炎症を反映していることが証明できましたので、診断基準に含まれるアルコールと早期慢性膵炎のEUS所見との関連を検討しました。 膵切除術を施行した症例で切除部位に随伴性膵炎を認めない、かつEUSを施行している116症例をもちいて、EUSの画像所見と関連する因子に関して検討した。この検討ではアルコールの摂取量と早期慢性膵炎所見との関連での有意差は生じなかった。その中にアルコール摂取量0gでも29.5%の13例に早期慢性膵炎所見を認め、逆に31.6%の6例で60g以上の摂取量でも正常膵を認めた。このことより早期慢性膵炎所見にはアルコール以外も関与している可能性が考えられた。ここまでの結果を2023年日本消化器病学会総会にて発表した。 今後、これらの検体を用いた病理学的な線維化等の評価することを検討しています。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
EUS像と病理像を同部位にて評価する方法に関しては当院での12例を用いた結果がpancreasに投稿し、acceptされました。その結果から分葉エコーと炎症を示す病理所見である腺房細胞の萎縮と線維化との関連が証明されました。また、EUS像と病理像を同部位で評価する方法も認められたので、今後、症例をさらに集積することでさらに評価に信ぴょう性をもたらすことができると考えています。しかし、現在、COVID-19の影響もあり、症例の集積に遅れが生じています。
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Strategy for Future Research Activity |
分葉エコーが病理学的に炎症を反映していると思われる、腺房細胞の萎縮と線維化との関連を証明できました。それに関しては、症例数を集積し、早期慢性膵炎の診断となった症例で分葉エコーをきたしている症例ときたしていない症例との比較を検討しています。その際はメタボローム解析など、他の診断手段との関連の証明も検討しています。 今回、早期慢性膵炎の所見にはない脂肪沈着に伴うと思われる膵実質の高エコーに関しても脂肪による炎症の有無や病理所見を評価することで早期慢性膵炎のEUS所見である分葉エコーや索状もしくは点状高エコーとの関連を評価することを検討しています。 また、今回の検討においてアルコール飲酒歴なしでも早期慢性膵炎のEUS所見を認め、逆にアルコール飲酒歴を満たしても正常膵症例もあり、病理学的に評価することにより、診断基準にあるアルコールの量の項目の必要性に関しての評価も検討しています。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス感染症の影響で研究が遅延したために次年度使用額が生じてしまいました。 余剰金に関しては、遅延した分の研究に用いる病理の特殊染色の試薬に使用や学術集会の参加、および論文投稿料などに使用します。
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