2022 Fiscal Year Research-status Report
Rap1不活化制御による制御性T細胞の動態調節とその破綻による腸炎病態への影響
Project/Area Number |
21K16011
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
堀谷 俊介 関西医科大学, 医学部, 助教 (90701649)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | インテグリン / Rap1 |
Outline of Annual Research Achievements |
低分子量G蛋白質Rap1は細胞極性やインテグリン接着性調節する制御分子であり、生体内においてGTP交換因子(GEF)とGTPase活性化タンパク(GAP)のバランスにより調整されている。我々は、リンパ球におけるRapGapとして知られるSIPA1、RASA3を二重欠損させたT細胞を用いて生体内における機能解析を行った。 RASA3;SIPA1二重欠損マウスのphenotype解析では、末梢血およびリンパ組織においてT細胞の低下を認め、特に末梢血での低下は顕著であった。RASA3;SIPA1二重欠損T細胞を用いたshort homing assay(AT1h)においてもリンパ組織へのホーミング異常が確認された。しかし、HEVへの接着、通過して実質に移動する過程への影響を検討したvery short homing assay(AT18分)ではホーミングに異常は確認されなかった。そこで、ケモカイン非存在下でもインテグリンが恒常的に活性化するRASA3;SIPA1二重欠損T細胞の性質から非リンパ組織に捕捉されている可能性を検討したところ、ICAM1が高発現している肺で主に捕捉されていることが分かった。そして肺への捕捉は抗LFA-1抗体による処理により阻害され、インテグリン活性化因子であるTalin1をさらに欠損させたT細胞においても肺での捕捉は阻害された。さらに、リンパ節におけるegressの効率を測定するとegressが顕著に低下していることが分かり、非リンパ組織での捕捉とこれらの二重異常により、末梢血での顕著な細胞数の低下につながることを明らかにした。さらにリンパ節におけるegressが低下している原因として、一度輸出リンパ管内に入ったT細胞が再度実質内に戻るというreverse migrationが起きていることを証明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、Rap1 を不活化する複数の GAP(RASA3、SIPA1)欠損による接着動態、抑制機能、腸炎発症病態への効果を調べ、Treg の免疫抑制機能における Rap1 不活化制御の重要性 を明らかにすることを目的としていた。しかし、実験で使用予定としていたRASA3;SIPA1二重欠損マウスのphenotype解析を行うと、予想に 反する結果が得られたことで、それらに対するメカニズムの解明に時間を費やしていたため、予定していた実験系を進めることがやや遅れている状況である。しかし、Rap-GAPの動態を証明できつつあるため、今後腸炎発症に至る実験系を計画していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
RASA3;SIPA1二重欠損マウスのphenotype解析およびその生体内でのメカニズムの解明は完了したため、今後は当初予定していた研究を推進していく予定である。 まずは、RASA3;SIPA1欠損Treg移入による腸炎抑制効果の評価を行い、樹状細胞に対する細胞間接着能と抑制機能の評価等を行う。
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Causes of Carryover |
現在実験を遂行中であるが、今後の追加実験等を含めた予備実験のため次年度使用額が生じた。マウス飼育や抗体等含めた試薬購入のために使用予定である。
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