2022 Fiscal Year Research-status Report
IDH変異陽性肝内胆管癌における特異的分子基盤の解明
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21K16012
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Research Institution | The Institute for Adult Diseases Asahi Life Foundation |
Principal Investigator |
藤原 弘明 公益財団法人朝日生命成人病研究所, その他部局等, 教授(移行) (00814500)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 胆管癌 / 代謝 / エピゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
肝内胆管癌(Intrahepatic cholangiocarcinoma: ICC)の約20%に同定されるIDH1/2遺伝子変異は、その特有の酵素活性を介して細胞の代謝及びエピゲノム制御に影響する。代表者藤原は先行研究として、IDH1変異が正常肝内胆管細胞へ解糖系亢進を誘導する(SciRep. 2019 Dec 11;9(1):18859.)ことを見出し報告した。解糖系亢進は癌の重要な代謝特性であり、この知見はIDH1変異の有するドライバー変異としての機能の一端を表していると考えられたが、単独では腫瘍形成能の獲得に至らず、最終的な発癌に至るまでの分子機構は未だ明らかでない。そこで本研究では、先行研究で確立したマウス肝内胆管上皮細胞の培養系に、IDH変異の他、ヒトICCで報告のある遺伝子異常を段階的に導入して、その影響をin vitro/in vivo両面から解析し、その生物学的意義について検討する。前年度の検討で樹立したヌードマウス皮下へのオルガノイド移植モデルにおいて、変異IDH1陽性ICCで報告のある複数の遺伝子異常を組み合わせて導入した肝内胆管オルガノイドは、70%以上の高い形成率で皮下腫瘍を形成し、正常胆管上皮から異型上皮組織、更には胆管癌に至るまでの過程をin vivo で再現した。変異IDH1を導入した株(M)由来の皮下腫瘍は、野生型IDH1を導入した株(W)由来の皮下腫瘍と比較してその組織学的悪性度が高く、かつ変異IDH1阻害剤の投与によりその悪性度の亢進は解除された。in vitroにおいては、M株はW株と比較して増殖や生存上のadvantageは無いため、両者由来の皮下腫瘍の組織像の違いは、上皮間質相互作用にあるのではないかと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
M株由来の皮下腫瘍モデルにおける変異IDH1阻害実験が順調に進行し、かつ阻害実験で仮説通りの結果が得られたため、in vivoにおける解析から、W株とM株の有する生物学的差異を解明する手がかりとして間質の差異に着目するに至り、上皮間質相互作用に着目したin vitro実験へとスムーズに移行することが出来たため。
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Strategy for Future Research Activity |
オルガノイドと間質細胞との相互作用を解析するin vitro培養実験系を確立し、検討を継続している。W株とM株が間質細胞にもたらす影響を解析することで、変異型IDH1下流の標的遺伝子の同定へと研究を進めていく方針である。
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Causes of Carryover |
疾患モデル動物への変異IDH1阻害剤投与実験において、当初想定していた薬剤量よりも大幅にdose downした条件で結果を出すことに成功したため、薬剤購入費を大幅に節約することが可能となった。ついては、今後のin vitro培養実験における解析等にその分の予算を充てていく予定である。
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Research Products
(4 results)