2021 Fiscal Year Research-status Report
Research for predictive indicators of therapeutic response of beta-adrenergic receptor blockers using myocardial tissue of patients with heart failure
Project/Area Number |
21K16031
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
中野 知哉 奈良県立医科大学, 医学部, 研究員 (60822343)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 非虚血性拡張型心筋症 / 心筋組織検体 / β-アドレナリン受容体シグナル / 免疫組織学的評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、研究初年度として、(1)非虚血性拡張型心筋症(NIDCM)患者の臨床情報と心筋組織検体の収集、および(2)NIDCM患者の心筋組織検体を用いたβ-アドレナリン受容体(AR)シグナル動態評価のうち(A)免疫組織学的解析と(B)パラフィン包埋心筋組織検体からRNAを抽出する予備実験、を行った。 (1)に関しては、臨床および組織学的にNIDCMと診断され新規にβ-AR遮断薬を導入された患者の患者背景と入院時と治療開始6ヵ月以上経過時の血液検査や心臓超音波検査等の臨床情報を収集した。そしてβ-AR遮断薬による治療反応性評価のため、これらの臨床情報からβ-AR遮断薬導入後の左室逆リモデリングの有無で患者を層別化した。また、心筋細胞におけるβ-ARシグナル動態を評価するため、症例登録したNIDCM患者の組織診断に用いたパラフィン包埋残余心筋組織検体を収集した。 (2)に関しては、NIDCM患者の心筋細胞におけるGタンパク質依存的β-ARシグナル動態を評価するため、同シグナル伝達経路の下流因子であるGタンパク質共役受容体キナーゼ2、β-arrestin2とcAMP応答配列結合タンパク質のリン酸化に対する抗体を用いて免疫染色を行い、心筋細胞におけるこれら因子の発現だけでなく局在を免疫組織学的に評価している。次に、心筋細胞におけるβ-arrestins依存的β-ARシグナル動態をRNAシーケンス解析で評価するため、パラフィン包埋心筋組織検体からRNAを抽出する実験を行った。本研究で用いる残余心筋組織検体の大きさは約3mmと非常に小さいため、まずパラフィン包埋剖検心筋組織検体からRNAを抽出する予備実験を行い、パラフィン包埋組織からRNAを抽出することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)NIDCM患者の臨床情報とパラフィン包埋心筋組織検体の収集は順調に進展した。またβ-AR遮断薬導入後の左室逆リモデリングの有無によるNIDCM患者の層別化も順調に進展した。 (2)NIDCM患者の心筋組織検体を用いたβ-ARシグナル動態評価のうち、Gタンパク質依存的β-ARシグナル伝達経路下流因子の免疫組織学的解析も順調に進展している。またパラフィン包埋心筋組織検体からRNAを抽出する実験に関しては、予備実験でパラフィン包埋剖検心筋組織検体からRNAを抽出できることを確認できた。そのため、本研究で用いる心筋組織検体と同サイズのわずかな心筋組織検体からRNAを抽出する新たな予備実験に着手しており、順調に進展している。 (3)β-AR遮断薬に対する治療反応性予測指標の探索と(4)新規NIDCM患者を対象とした実用性評価に関しては、(1)と(2)から得られた解析結果をもとに検討していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究2年目(2022年度)には、下記(1)と(2)を行う。 (1)NIDCM患者の心筋細胞におけるGタンパク質依存的β-ARシグナル動態を検討するため、パラフィン包埋残余心筋組織検体を用いた免疫組織学的解析を引き続き行う。本研究で検討する因子は、Gタンパク質依存的β-ARシグナル伝達経路下流因子であるGタンパク質共役受容体キナーゼ2、β-arrestin2とcAMP応答配列結合タンパク質のリン酸化である。 (2)本研究で用いる心筋組織検体と同じ約3mmの大きさのパラフィン包埋心筋組織検体からRNAを抽出する予備実験を引き続き行う。この予備実験後に、NIDCM患者と正常心機能患者のパラフィン包埋心筋組織検体からRNAを抽出し、このRNA検体を用いたRNAシーケンス解析を外部業者に委託しトランスクリプトーム情報を収集する。本研究ではβ-arrestins依存的β-ARシグナル伝達経路に関連する因子に注目する。 研究3年目(2023年度)には、上記(1)と(2)から得られたβ-ARシグナル動態に関連する因子の発現を比較検討することにより、β-AR遮断薬に対する反応性を予測する指標になりえる有用な因子が存在しないかを探索する。そして、これらβ-AR遮断薬に対する治療反応性を予測する指標の実用性評価のため、新たに臨床および組織学的にNIDCMと診断された患者のパラフィン包埋心筋組織検体を用いて検討する。
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Research Products
(6 results)