2022 Fiscal Year Research-status Report
心移植後冠動脈病変に対するウイルス感染の関与と至適薬物療法の研究
Project/Area Number |
21K16049
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
辻 正樹 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (90880873)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 重症心不全 / 心臓移植 / 移植後冠動脈病変 / 補助人工心臓 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は心臓移植後の合併症である移植後冠動脈病変に着目した研究である。移植後冠動脈の新たな治療・管理を確立することが目的である。 当院で2022年4月~2023年3月に行われた心臓移植件数は21例だった。これらの症例に対して、移植後冠動脈病変のリスク因子である脂質異常症、糖尿病、ウイルス感染等の確認のため定期的な採血を行った。また移植後拒絶反応の確認のため、心臓移植後1年間は1患者当たり計10回の心筋生検を行った。さらに心臓移植後4週と1年時に冠動脈造影検査、或いは血管内超音波検査による冠動脈内膜の評価を継続的に行っている。 動脈硬化性の冠動脈疾患においてはLow Density Lipoprotein(LDL)コレステロール値が低値であればあるほど心血管イベントが減少することが知られているが、移植後冠動脈病変においては強力なLDLコレステロール降下療法の有効性は定かではない。そのため移植後冠動脈病変の予防・治療のためのLDLコレステロール目標値を検討すべく研究を行った。当院で心臓移植を施行した137人を対象に移植後1年時のLDLコレステロールが<70mg/dL(Low LDL-C)群と≧70mg/dL(High LDL-C)群で、その後の移植後冠動脈病変を含む心血管イベントを比較・評価した。患者背景としてLow LDL-C群でストロングスタチンの使用率が有意に高く、High LDL-C群で虚血性心疾患を基礎心疾患とする患者が有意に多かったが、心血管イベントに関しては両群で有意差がなかった(p=0.17) 移植後冠動脈病変の治療としてスタチンは確立されているが、その種類や用量については今後更なる検討が必要と考えられた。 以上が本年度の研究実績の概要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
心臓移植後患者に対する定期的な冠動脈評価を継続して行っている。 また、新規心臓移植患者数も想定範囲内であることから上記の通り進捗状況を判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も本年度と同様に症例を重ねていきたいと考えている。 移植後冠動脈病変の評価については冠動脈微小循環についても評価を検討している。
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Causes of Carryover |
コロナウイルスパンデミックにより参加予定の学会がweb開催等であったため。
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