2021 Fiscal Year Research-status Report
Molecular mechanisms of heart failure development of novel therapeutic approach based on novel lncRNA
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21K16061
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
佐藤 迪夫 熊本大学, 生命資源研究・支援センター, 特任助教 (10833410)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 心不全 / lncRNA / ミトコンドリア / DNA損傷応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、多くのlong non-coding RNA(lncRNA)が心肥大・心不全に関与することが報告され、注目されている。また多くのlncRNAは核内に局在し近傍に存在する単一の標的に対して作用を及ぼすものが大多数である。申請者は網羅的なGene Trap法を用いて、心筋細胞に特異的に高発現し、細胞質に局在する新規lncRNA Caren (cardiomyocyte-enriched noncoding transcript)を同定した。Carenは加齢や心負荷により減少し、その欠失は心不全増悪を招き、補充により心保護作用を示すことを見出した。Carenの心臓保護作用のメカニズムとして、Carenが①Hint1の翻訳抑制を介して、ATMの活性化を抑制し、DNA損傷応答を軽減すること、②Tfamの増加を介してミトコンドリア生合成を亢進し、心臓におけるエネルギー代謝・供給を改善させることを明らかにした。また、ヒト、マウスのゲノム染色体の対応する部位から6種のヒトCAREN候補転写物を同定し、候補転写物1と3がヒト心臓組織において発現し、候補転写物1の発現量がBNP発現量と逆相関することを見出し、候補転写物1がヒトCARENオルソログであることが示唆された。申請者は、以上の結果を論文発表した(Sato, et al. Nat commun 12(1):2529, 2021)。さらに、ヒトCARENオルソログを過剰発現させたマウスを作製し、圧負荷誘導心不全モデルにより、心保護作用を検証した。その結果、ヒトCARENオルソログTgマウスは圧負荷誘導性心不全に抵抗することが明らかとなった。24ヶ月齢の高齢マウスを用いた加齢による心機能変化を検証した。その結果、高齢マウスでは心臓収縮能の低下に加えて拡張能が有意に低下していることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年5月に成果を論文に報告しており(Sato, et al. Nat commun 12(1):2529, 2021)、さらに、高齢マウスの心機能低下に対するCarenによる心機能改善作用も見出しつつあることに加え、Carenのヒトホモログ候補の解析にも着手しており、研究は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本邦では超高齢化社会を背景に、心不全患者数が増加の一途を辿っている。高齢者における心不全の多くを占める「心臓の収縮力が保たれた心不全:Heart Failure with Preserved Ejection Fraction:HFpEF」は、有効な治療薬が少なく、その分子基盤について未解明な点が多い。申請者は、これまでの研究で、lncRNA Carenによる抗心不全作用を明らかにしてきたが、今後はHFpEFにも対象を拡大して、心保護作用の確認を行う。そのために、HFpEFモデルの確立を急ぐ。
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Causes of Carryover |
HFpEFモデル作製のためのHigh-Fat dietの調達が年度内に間に合わなかったため。
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