2022 Fiscal Year Research-status Report
高血圧症におけるIV型コラーゲン分解産物tumstatinの役割解明
Project/Area Number |
21K16067
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
安田 純平 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (90850777)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 循環薬理学 / 高血圧症 |
Outline of Annual Research Achievements |
高血圧症は致死率は低いが様々な病気のリスク因子となる疾患であり、日本国内の罹患者が非常に多いことから医療経済学的にも問題となっている。高血圧は体循環における末梢の抵抗血管の反応性低下や血管壁の肥厚を含む血管リモデリングが生じることで進展していく。一方、肺循環は体循環と異なり、心臓と肺の間をつなぐ経路である。この中で肺動脈圧が亢進する病態が肺高血圧症であり、特に肺動脈性肺高血圧症は難病に指定されている。Tumstatinは細胞の足場である基底膜を構成するIV型コラーゲンα3鎖が分解されることで初めて生理活性を示す内因性因子である。申請者はこれまでに、Tumstatinの活性領域ペプチドであるT3 peptideが虚血性心疾患に対して保護的に働く可能性を提示してきた。TumstatinのもとになるIV型コラーゲンα3鎖は心臓での発現量が少なく、肺や腎臓で高発現していることが知られている。肺や腎臓は心臓と密接に関係しており、また心機能、肺機能、腎機能の低下と血圧も関連している。このことから、申請者はTumstatinは肺や腎臓で作られたTumstatinは循環血液にのって一部が心臓に分布するのではないか、そうだとするならば血管を構成する血管平滑筋細胞に対しても何らかの役割を果たしているのではないかと考えて本研究計画を立案した。 今年度はラットT3 peptideを合成し、以前報告したラット初代培養心線維芽細胞に対する影響を再現できるか検討したが、以前の報告と異なり影響を及ぼさなかった。以前の報告ではヒトT3 peptideを使用したことから、次年度以降はラットとヒトでTumstatinの作用に違いがある可能性を視野に入れて本研究課題を継続する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度は所属研究機関の変更に伴い、研究活動を行うための環境づくりを0から始めることになった。また所属研究室のスタッフも申請者を含めてリセットされたため、実験機器の立ち上げを含めて、研究室のセットアップに多くの時間を費やした。 今年度は、現所属研究室で血管平滑筋細胞の初代培養が行えるように、実験環境を整備した。またラットT3 peptideを合成して、以前に報告したラット心線維芽細胞に対するヒトT3 peptideの影響を再現できるのか確認実験を行った。しかし予想に反して再現性がなかった。その原因について、ヒトとラットの種差の影響があるのかなど、更なる検討を行わばければ研究計画を進められないので、やや遅れていると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度から今年度にかけて研究室内の実験環境がある程度整ってきたので、研究3年度からは本研究課題に関する実験を本格化していく。ヒトあるいはラットのTumstatin活性断片T3 peptideで血管平滑筋細胞を刺激した際の影響を検討していく。また現在の研 究室は電気生理学的手法を行うことができるので、Tumstatinで刺激した血管平滑筋細胞の電気活動の測定も行っていく。一方で、摘出血管標本を使用したex vivo血管収縮張力測定やin vivoでの観血的・非観血的血圧測定については実験機器が不足している。前述の研究手法は、申請者の出身研究室が得意とする手法であるため、実験技術の指導や現地での実験機器の貸出といった方法で協力を仰ぎたいと考えている。またIV型コラーゲンα3鎖のTumstatin領域のみを不活化したコンディショナルノックアウト動物をラットで作製することを計画している。
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Causes of Carryover |
所属研究機関の変更、所属研究室のスタッフ入れ替わりの伴う研究室のセットアップならびに所属していた大学院生への研究指導に多くの時間を費やしたために、本研究課題に取り組むことが出来なかったので本年度の支出額が少なかった。 次年度以降は本研究課題に関する実験が本格化するため、各種試薬類、消耗品類や本研究課題遂行に必要な機器を購入する予定である。
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