2021 Fiscal Year Research-status Report
ドキソルビシン心筋症におけるフェロトーシス誘導の分子機序解明と新たな治療法の確立
Project/Area Number |
21K16090
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
池田 昌隆 九州大学, 医学研究院, 助教 (10567382)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | アントラサイクリン系抗がん剤 / ドキソルビシン / フェロトーシス / 鉄 |
Outline of Annual Research Achievements |
ドキソルビシンは悪性腫瘍や乳がんの治療に使用される抗がん剤であるが、用量依存性に心毒性を呈する。ドキソルビシンによる心毒性によって発症する心筋症(ドキソルビシン心筋症)は予後不良であり、心毒性により癌治療の継続が困難となっている現状である。我々は、鉄依存性に生じる新規制御性細胞死であるフェロトーシスがドキソルビシン心筋症発症の病態基盤であることを明らかにした。しかしながら、依然として鉄の上昇する分子機序は明らかではなく、治療法は確立していない。 本年度はドキソルビシンによって細胞内、特にミトコンドリアにおいて鉄が増加する分子機序について検討した。ミトコンドリア内においてヘム合成が行われていることに着目した。ドキソルビシン投与したマウス心筋組織および添加した心筋細胞では、ヘム合成経路の律速酵素であるアミノレブリン酸合成酵素(Aminolevulinate synthase 1; ALAS1)が著明に低下し、ヘム合成が低下していることを明らかにした。本結果からヘム合成障害によるミトコンドリア内の鉄の利用障害がミトコンドリア内の鉄が増加の原因である可能性が示唆された。実際に心筋細胞においてALAS1を過剰発現させたところ、ドキソルビシン添加下において心筋細胞のヘム合成は正常化し、鉄の蓄積は抑制され、さらにドキソルビシンによって生じるフェロトーシスは抑制された。 以上の結果から、ドキソルビシンによって生じるミトコンドリア内の鉄の蓄積および鉄蓄積により生じるフェロトーシスは、ALAS1の発現低下に基づくヘム合成および鉄の利用障害に基づくものであることを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請時に立案した仮説の通りに実験データが得られ、初期研究計画で想定していた遅れが生じなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後はミトコンドリア内で増加した鉄がフェロトーシスを誘導する詳細な分子機序を明らかにする。
|