2022 Fiscal Year Research-status Report
近位尿細管上皮細胞の代謝リプログラミングを標的とした心腎連関の病態解明
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21K16096
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
白川 公亮 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (30626388)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | オステオポンチン / 腎不全 / マクロファージ |
Outline of Annual Research Achievements |
研究者は、Spp1-EGFP-knock in (KI)マウスを用いて、オステオポンチンが病態や臓器によって異なる細胞種で転写活性が上昇することを見出してきた。今回、研究者は、近位尿細管上皮細胞にストレスが加わった時に上昇する蛋白としてのオステオポンチンに着目した。 ヒトでは急性腎障害に伴い血中オステオポンチンが上昇すると予後不良因子となるが、マウスを用いた実験により虚血再灌流障害を受けた腎臓では、オステオポンチンの転写活性が、近位尿細管上皮細胞で亢進することを見出した。また、虚血再灌流障害だけでなく片側尿細管結紮モデル、ストレプトゾトシン誘発性糖尿病性腎症モデルでも近位尿細管上皮細胞におけるOPNの転写活性が亢進したが、一方で、高脂肪食負荷肥満モデルではオステオポンチンの転写活性上昇効果は弱かった。以上より、オステオポンチンは虚血再灌流障害、高血糖時の腎臓のストレスマーカーとして考えられた。Spp1-EGFP- KIマウスの腎臓から近位尿細管上皮細胞を高濃度のグルコースの存在下で培養するとオステオポンチンの転写活性が上昇し、近位尿細管上皮細胞は、高血糖状態に対して感受性が高く、非常に強いストレスを受けていることが分かった。高血糖曝露におけるオステオポンチンの転写活性亢進は、近位尿細管上皮細胞におけるmyoinositol oxygenaseの過剰発現がおこり、これによって解糖経路の側副経路であるmyoinositol pathway が活性化、ミトコンドリアのfragmentation と脱分極が惹起され、結果として腎臓の炎症・線維化が惹起されることが示唆された。 さらに、本研究の過程で、OPNは腎臓だけではなく肺の炎症・線維化の増悪機序にも線維芽細胞の活性化や炎症細胞の浸潤促進という機序で重要や役割を果たすことを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルスの影響による研究遅延、必要資料の輸入遅延などが影響した。
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Strategy for Future Research Activity |
臓器線維化は腎臓だけではなく、心臓や肺でも惹起される。研究者は、オステオポンチンが関連する様々な病態に関する研究を実施してきたが、オステオポンチンは病態臓器特異的に不適切に分泌される際は生体にとって悪影響を持つが、創傷治癒や細胞死抑制効果などの細胞保護的な役割も併せ持つ二面性のある分子である。本研究の過程で、オステオポンチンは肺の炎症や線維化にも重要な役割を果たすことを見出した。腎臓と同様にSpp1 EGFPノックインレポーターマウスを用いた肺線維症モデルマウスでは、オステオポンチン産生細胞が肺に集積して、炎症や線維化を惹起しており、研究者はオステオポンチンを産生する細胞をフルーサイトメトリーにより同定している。また、この細胞をフローサイトメトリーにより回収して、bulk RNA-seq, LC/MS/MSによる質量分析, single cell RNA-seq解析を組み合わせたマルチオミクス解析により、オステオポンチンが関与する肺線維化の機序に関する知見を得ており、併せて解析していく予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響による研究遅滞による影響が大きい。 各種の緩和により現在研究は順調に進んでおり、延長申請により繰り越した金額含めて、物品費やその他解析費用により使用する計画は立案済みである。
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