2021 Fiscal Year Research-status Report
新規三次元イメージングシステムを用いた遺伝性肺動脈性肺高血圧症の病態解明
Project/Area Number |
21K16110
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤原 隆行 東京大学, 医学部附属病院, 特任助教 (40836441)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 肺高血圧症 / 血管内皮細胞 / 血管平滑筋細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者が開発した三次元可視化システムを用いて、低酸素誘導性肺高血圧症(PH)マウスモデルにおける、特徴的な血管新生像を捉えることに成功した(Fujiwara et al. Circulation, 2021)。この血管新生反応はVEGF阻害薬によって消失し、PHが増悪することから、低酸素負荷に対する代償的な反応と考えられた。この代償的血管新生の背景には転写共役因子PGC-1αが大きく関与していることが遺伝子発現解析などより判明し、肺内皮細胞特異的Pgc1αノックアウトマウスおよびPGC-1α作動薬を用いた実験により、肺内皮PGC-1αが低酸素誘導性PHにおいて代償的血管新生を司っており、新規治療標的として期待される結果が得られた。
この現象をより生理的なPHモデルで検証すべく、浸透率の極めて高い家族性PAH家系のBMPR2ミスセンス変異(p.Tyr247X)を導入した新規PAHモデルマウス(Bmpr2-KI)の解析を行った。Bmpr2-KIマウスは有意な圧の上昇は示さず、臨床的観点からはPHには至っていなかったが、病理学的評価ではPHに特徴的な肺動脈中膜・平滑筋の増生を認め、PHの前病変の可能性が考えられた。そこで我々は既に低酸素誘導性PHでPHの代償に必要と判明したPgc1αを、Bmpr2-KIマウスの内皮で特異的にノックアウトさせる試みを行った。すると通常大気下で右室圧は有意に上昇し、肺動脈平滑筋のみならず内皮細胞も異常増殖を呈し、最重症病変でありplexiform lesion様の変化も見られた。この2つの遺伝子変異操作により、より生理的な遺伝性PHモデルの作成に成功し、今後はそのメカニズムを解明すべく、シングルセルRNA解析や三次元解析を行う予定である。またヒト肺組織採取に関する倫理申請も承認を得たため、その解析も進めていく予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
通常大気下でPHを引き起こし、病理学的評価でも重症病変を再現している遺伝性PHモデルマウスの作成に成功し、過去にはない生理的な動物モデルの作成に成功したため。 またヒトPH肺検体採取に関する当院の倫理申請を行い、倫理委員会により承認されたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
肺内皮特異的PGC-1αノックアウトBmpr2-KIマウスを用いて、内皮細胞・平滑筋細胞の異常増殖のメカニズムを解明すべく、シングルセルRNA解析や三次元可視化システムを用いた網羅的解析を行う予定である。またヒトPH肺組織の採取を推し進め、新規PHモデルマウスで得られた知見についての検証を行う予定である。
|
Causes of Carryover |
次年度に必要なシングルセルRNA解析の費用確保のため
|
Research Products
(8 results)