2023 Fiscal Year Annual Research Report
特発性肺線維症における核膜恒常性破綻の関与について
Project/Area Number |
21K16123
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
伊藤 三郎 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (30865291)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 特発性肺線維症 / 核膜 / 核膜傷害 |
Outline of Annual Research Achievements |
特発性肺線維症(IPF)は慢性進行性の肺線維化をきたす予後不良な疾患である。細胞核を覆う核膜は遺伝情報などの核内容物を外部から保護するだけでなく、核膜孔を介した核-細胞質輸送による転写因子の局在制御、核膜とヒストン蛋白との結合によるクロマチン制御による転写調節、外的な物理刺激に対するシグナル応答、テロメア保護などの様々な役割を持つ。IPFにおいて核膜恒常性の破綻が病態へおよぼす影響について検証した。 In vitro検討では肺線維芽細胞を用い、核膜傷害を誘導する刺激には過酸化水素とタバコ煙抽出液を用いた。刺激により核膜の変形が認められた。また核膜構成成分のlamin B1をノックダウンしたところ予想通り刺激時の核膜変形はコントロールに比べ顕著であった。lamin B1ノックダウン時には核膜刺激によるα-SMA、type I collagen、fibronectinの発現はさらに上昇が認められ、筋線維芽細胞分化が強く誘導されたと考えられた。小分子化合物のRemodelinはNAT-10の特異的阻害剤で核膜保護作用が示されている。Remodelinは核膜刺激時のα-SMA、type I collagen、fibronectinの発現を抑制する傾向が見られた。 In vivoでの核膜恒常性維持の効果をブレオマイシン肺線維症マウスモデルで検討した。ブレオマシン投与による線維化誘導部位における線維芽細胞において核膜の変形が認められた。しかしRemodelinの投与は線維化の進行を抑制しなかった。IPFの肺組織において核膜形態の変化や核膜関連タンパクの発現は線維化の程度との一致は見られず有用な指標としては用い難い結果であった。 今回の検討では核膜恒常性の維持は正常な細胞環境下では保護的に働くが、線維化病態のような持続的な圧負荷がかかる細胞環境下ではむしろ増悪因子として働く可能性が示唆された。
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