2021 Fiscal Year Research-status Report
低真空走査型電子顕微鏡による早期びまん性肺病変のパラフィン切片3次元微細構造解析
Project/Area Number |
21K16124
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
梶本 雄介 日本医科大学, 医学部, 助教 (10899082)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 低真空走査電子顕微鏡 / 通常型間質性肺炎 / 非特異性間質性肺炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年5月現在、肺癌の細胞診検体の症例検討以外で肺の病理組織を対象とした低真空走査電子顕微鏡(LV-SEM)関連の研究は報告されていない(J Med Dent Sci. 2017;64(1):1-8)。そのためLV-SEMの肺の評価基準は確立されておらず、最初の検体として光学顕微鏡下で正常と診断されたヒト由来の肺組織を対象とした。 パラフィン固定下の過ヨウ素酸メセナミン銀(PAM)染色標本を作製した。主に肺胞壁間質を評価した所、壁内の毛細血管構造が比較的観察し易く、血管周囲の超微形態学的な線維構造が見られた。血管の均一な基底膜構造が観察され、血管内腔面は比較的平滑で、上皮の基底膜面は繊細な毛状もしくは網目様の構造が観察された。当施設の腎の正常組織を参照した所、肺胞上皮-血管の間を介在する基底膜や繊細な間質の微細構造は、糸球体係蹄における上皮-血管の間に観察される基底膜や間質の構造と類似性が見られた。 近年の抗体関連型拒絶反応やループス腎炎など腎疾患のLV-SEMの論文では、主にPAM染色で評価しており、糸球体基底膜に網目構造や二重化など微細構造の変化が報告されてきた (Biomed Res. 2020;41(2):81-90) (Case Rep Nephrol Dial. 2021 Jan-Apr; 11(1): 36-47)。間質性肺炎などにおいても、肺胞壁の毛細血管は糸球体係蹄のような変化を来す可能性があり、LV-SEMの超微形態学的な評価において重要な部位と考える。しかし、基底膜や間質に抗体沈着や抗原抗体反応を来す疾患が多い腎と異なり、肺は間質を対象とするPAM染色のみでの超微形態学的な構造の評価は困難であった。肺は気腔の虚脱や閉塞を来し易くLV-SEMの評価基準は確立されてない事を併せて、線維化や炎症が進行した症例において現時点で評価は難しいと思われた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
低真空走査電子顕微鏡(LV-SEM)の対象に選定している検体は過ヨウ素酸メセナミン銀(PAM)染色のみを施行している。しかし、間質を対象とするPAM染色のみでは肺の十分な評価は難しいと思われ、そのため細胞の配列や分布像の把握が可能な白金ブルー(Pt-blue)染色を追加する必要性が生じた。 LV-SEMにおける肺の正常基準が確立されていない事を考慮し、疾患群の検体は比較的早期の病変で正常領域の残存確認が容易なものが疾患群の検体として望ましいと思われた。例として早期のうっ血、幼弱な線維化が目立つ通常型間質性肺炎、器質化肺炎などがあげられるが、標本の選定が想定されたより時間を要しており、完了していない。
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Strategy for Future Research Activity |
①低真空走査電子顕微鏡(LV-SEM)における肺の評価基準が確立していないので、ヒト由来の検体や過去の研究で用いられたモデルマウスの両方の検体から正常と早期病変を選定する(J Cell Mol Med. 2019 Oct;23(10):7043-7053)。早期病変の検体は光学顕微鏡下で正常部位の残存や疾患部位との移行が明瞭に把握可能なものが望ましいと考える。 ②これまでのLV-SEMの研究では、ホルマリン固定下で従来の電顕と同様に観察可能であるとする報告がある一方で、グルタール固定下の検体がより糸球体の微細な構造変化を確認し易いとする報告もあり、明確に結論は出ていない(Pathol Res Pract. 2012 Sep 15;208(9):503-9)(Clin Exp Nephrol. 2022 Mar;26(3):216-225)。そのため、ヒトやマウスでの正常や早期病変の検体でパラフィン固定、グルタール固定下の標本をそれぞれ作成し、どちらが有用な肺の所見を観察可能であるか比較する。 ③ヒトやマウスでの正常や早期病変の検体で、肺胞上皮や血管内皮の構造を捉えるため、過ヨウ素酸メセナミン銀(PAM)に加えて白金ブルー(Pt-blue)染色を施行する。その他に細胞評価の補助所見として、CD34やkeratinの免疫染色のLV-SEM標本も作製する。LV-SEMのPt-blue染色では、過去の動物実験やヒトの症例検討で腎疾患における糸球体の上皮細胞の突起消失および角膜創傷治癒の血管新生などの微細な変化が報告されている(Clin Exp Nephrol. 2022 Mar;26(3):216-225)(Transl Vis Sci Technol. 2020 May 16;9(6):14)。肺胞壁の上皮や血管内皮でも微細な早期変化を認める可能性が期待される。
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Causes of Carryover |
低真空走査電子顕微鏡画像を解析評価するためのパソコンの購入および電子画像評価機能が求められた。
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