2023 Fiscal Year Research-status Report
在宅酸素療法を可能にする自動酸素流量調整装置の開発のための基盤研究
Project/Area Number |
21K16143
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
山本 章裕 鳥取大学, 医学部附属病院, 助教 (70898486)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 在宅酸素療法 / 慢性Ⅱ型呼吸不全 / 自動酸素流量調整装置 / 慢性閉塞性肺疾患 / 酸素飽和度 / 経皮的二酸化炭素分圧 |
Outline of Annual Research Achievements |
在宅酸素療法は慢性呼吸不全患者の生命予後を改善させる重要な治療法である.動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)が,45 Torr以上のⅡ型慢性呼吸不全は慢性的に高PaCO2血症を伴い,患者の一部は延髄にある中枢化学受容器がPaCO2上昇に対して反応低下する馴化を生じている.この場合,低酸素状態で末梢化学受容器の頸動脈体を介して換気増大させている場合もあるため,急速な酸素吸入量増加は換気低下を生じCO2ナルコーシスの危険性を増すことがある.しかし,低酸素血症を治療することは必要であるため酸素流量の処方が難しい. Ⅱ型慢性呼吸不全患者に対する吸入酸素量決定は,動脈血ガス分析を複数回行い,臨床的に安全と思われる吸入酸素量を安静時,労作時,就寝時などに分けて注意深く決定している.しかし,侵襲的であり決定が曖昧な点もあった.経皮的二酸化炭素分圧測定装置(TOSCA)は非侵襲的にPaO2の情報としてパルスオキシメータの酸素飽和度(SpO2),PaCO2の情報としてPtcCO2連続測定が可能である.本年度は, SpO2とPtcCO2を非侵襲的に連続測定して,これらの2つの測定値をもとに2系統のフィードバックを利用した自動酸素流量決定システムを確立した.具体的には,1つめのループとして,目標SpO2を設定して(例:93%)その値より低ければ酸素濃縮器からの吸入酸素流量を増加させる.上限SpO2を設定して(例:97%)それより高値ならば吸入酸素流量を減少させる.2つめのループとして,PtcCO2が測定開始時(酸素吸入なし,あるいは0.25L/分の酸素吸入)の基線値より10 Torr上昇すると吸入酸素流量を減じる.これらのアルゴリズムを組み込んだ.ノートPC,経皮的二酸化炭素分圧測定装置(TOSCA),酸素濃縮器を連動させることは可能となっている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
SpO2とPtcCO2の測定データを元に,自動的に酸素流量を調整するアルゴリズムおよびプログラムを作成した.経皮的二酸化炭素分圧測定装置(TOSCA)とノートパソコン(PC),酸素濃縮機を接続し,TOSCAによって得られたSpO2とPtcCO2の測定データをPCへ出力し,自動酸素流量調整プログラムによって決定した酸素流量を酸素濃縮機から投与するシステムを構築した.対象患者の同意を取得し,システムを運用する予定であったが,新型コロナウイルス感染症の流行の為,実際の計測が困難な状況にあった.
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Strategy for Future Research Activity |
非侵襲的に得られたSpO2、PtcCO2のデータを元に自動的に酸素流量調整を行うシステムを構築した.今後は在宅酸素療法を実施されている慢性Ⅱ型呼吸不全患者より同意を取得し,システムを利用した処方酸素流量の調整を行い,自動酸素流量決定システムの臨床的効果を検討する.
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Causes of Carryover |
今年度も実際の患者での運用を進める予定であったが,新型コロナウイルス感染症の流行によって運用を進めることが困難な状況にあった.新型コロナウイルス感染症の流行が沈静化してきており,次年度では実際の患者での運用を進める予定であり,残予算を繰り越して使用する予定である. 次年度の予算としては酸素流量調整システムで使用する消耗品や学会への旅費,英文論文の校正費用,被験者への保険費などを予定している.
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