2021 Fiscal Year Research-status Report
肺胞微石症における破骨細胞様多核巨細胞の機能解析と治療への応用
Project/Area Number |
21K16144
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
上原 康昭 札幌医科大学, 医学部, 助教 (40882907)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 肺胞微石症 / RANKL / 破骨細胞 / RANK |
Outline of Annual Research Achievements |
肺胞微石症は、肺胞上皮のNpt2bリン酸トランスポーターが欠損することで肺胞内にリン酸塩の蓄積を生じ、不溶性の微石が形成される。申請者は肺胞微石症患者肺のSingle cell RNA-seq (scRNA-seq)解析から、肺内のマクロファージに破骨細胞様の遺伝子特性があることを明らかにした。本申請研究では、肺胞微石症における破骨細胞様多核巨細胞の機能の解析を行うことを目的に本研究を計画した。 肺胞微石症患者及びモデルマウスから肺胞洗浄にて回収された微石をプロテオミクス解析及び電子顕微鏡による観察を行い、微石は純粋なリン酸カルシウムの結晶ではなく肺内のサーファクタント蛋白質の他、骨の構成や破骨細胞の分化に関わるオステオポンチンなどを含む400種類以上の蛋白質から構成され、骨のような海綿構造をとっていることを明らかにした。肺胞微石症患者及びモデルマウス肺の組織学的解析では、微石を取り囲むように破骨細胞に特徴的である酒石酸耐性酸フォスファターゼ(TRAP)やカテプシンK (Ctsk)陽性の多核巨細胞が存在していることを発見した。また、破骨細胞様多核巨細胞への分化におけるReceptor activator of NF-κB ligand (RANKL)の影響を解析するために肺胞微石症モデルマウスに抗RANKL抗体を腹腔内投与後の肺を摘出しTRAP染色を行い、抗RANKL抗体が肺内のTRAP陽性多核巨細胞を有意に減少させることを明らかにした。また微石のクリアランスの評価は、経気管的にリン酸カルシウムに結合する近赤外蛍光プローブを投与し微石を標識した後に抗RANKL抗体を投与し、In Vivo Imaging Systemにて標識された微石量の変化を経時的に評価した。抗RANKL抗体は微石症モデルマウス肺における微石のクリアランスを有意に阻害することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本申請研究では令和3年から4年度にかけて(A)肺胞微石症における破骨細胞様多核巨細胞を中心とした分子・細胞レベルでの病態解析と(B)破骨細胞様多核巨細胞の機能に注目した臨床応用可能な治療法開発を実施することを目標としている。 今年度は、肺胞微石症における多核巨細胞への分化や破骨細胞様機能がRANKL依存性であること、またRANKL依存性の破骨細胞様の分化が肺における微石のクリアランスに必要であることを示すことにより、(A)肺胞微石症における破骨細胞様多核巨細胞を中心とした分子・細胞レベルでの病態解析を遂行した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は破骨細胞様多核巨細胞の機能に注目した臨床応用可能な治療法開発をに関する研究を遂行することを目的とする。肺胞微石症マウス肺を肺胞洗浄し、肺胞内の異常なリンやカルシウム濃度の改善や破骨細胞分化抑制因子であるオステオプロテゲリン(OPG)を除去することで破骨細胞の分化の亢進や活性化を試みる。具体的な研究方法としては、肺胞微石症モデルマウスに2週間毎に、麻酔下に生理食塩水200 μlによる肺胞洗浄を行い、最後の肺胞洗浄から4週間後に安楽死させ肺を摘出し重量を測定したのちに摘出肺を洗浄し洗浄液を遠心により細胞と上清に分ける。Controlには麻酔のみ行い洗肺胞浄を行わない肺胞微石症モデルマウスを用いる。上清はリンとOPGの濃度をELISAにて測定する。細胞はqPCRにて破骨細胞関連遺伝子の発現量を測定する。また一部のマウス肺は重量測定後にTRAP染色を行い、破骨細胞様多核巨細胞数を計測する。本研究では肺胞洗浄による微石のクリアランスへの影響を解析するために、肺胞洗浄後に肺胞内のリンやOPGの濃度の減少、破骨細胞様多核巨細胞の分化の亢進、微石の減少による肺重量の減少が生じるかを検証する。
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Causes of Carryover |
令和3年度は新型コロナウイルス感染症により学会参加が難しく、予定していた旅費は使用できなかった。 令和4年度の学会参加費用または物品費として使用する予定とする。
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