2021 Fiscal Year Research-status Report
エネルギー代謝ダイナミクスからみた腎臓病の病態解明と薬剤スクリーニング法の確立
Project/Area Number |
21K16162
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山本 伸也 京都大学, 医学研究科, 助教 (90837105)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 腎臓 / ATP / 二光子顕微鏡 / エネルギー代謝 / 急性腎障害 / 糸球体 / イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者らは、腎臓が極めてATPの要求性が高い臓器であることに注目し、ATP可視化マウスと二光子顕微鏡を用いた生体腎ATP可視化技術を独自に確立しました。急性腎障害時の近位尿細管のATP回復不良が、慢性期の腎線維化を促進する予後不良因子であることを見出し、急性腎障害から慢性腎臓病に至る移行メカニズムの一端を明らかにしました。しかしながら、技術的に腎臓の深部観察は困難であり、急性腎障害時の糸球体や髄質領域でのATP動態は、未解明でした。 本研究では、第一に急性腎障害時の糸球体におけるATP動態を明らかにすること、第二に腎全領域のそれぞれの機能部位におけるエネルギー代謝を明らかにすることを目標としました。2021年度は、虚血性急性腎障害における糸球体のATPイメージングに成功し、糸球体内の各細胞群で、ATP動態が異なることや虚血時間が長いほど糸球体のATPの回復率が低下することを見出しました。また、ATP可視化マウスを用いた腎スライス培養系を樹立することで、全領域でのATPの観察が可能になりました。さらにATP合成阻害剤投与によるATP変化を詳細に解析することにより、ネフロンセグメントによってATP産生メカニズムが異なることを明らかにしました。 以上の、急性腎障害の糸球体ATP動態の知見は、急性腎障害から糸球体硬化の進行メカニズムの解明につながることが期待できます。さらに、腎スライス培養によるATP産生メカニズムやATP動態の知見は、腎保護薬や腎障害物質を投与した際の、エネルギー代謝の側面から見た薬理作用の機序の解明に繋がり、今後腎保護薬や腎障害物質のスクリーニング法の確立に資すると期待できます。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画以上に進展している 2021年度は、急性腎障害における糸球体のATPイメージングに成功し、細胞群ごとのATP動態の詳細を明らかにすることができたため。また、ATP可視化マウスを用いた腎スライス培養系を樹立に成功し、ネフロンセグメントによるATP産生メカニズムの違いを明らかにすることができたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
急性腎障害時の糸球体ATP動態と慢性期の糸球体の機能・構造変化の相関を解析し、急性腎障害から糸球体病変の進行メカニズムを明らかにします。さらにATP可視化マウスを用いた腎スライス培養を応用し、腎保護薬のスクリーニング法を樹立し、新規治療候補分子の開発につなげることが期待できます。
|
Causes of Carryover |
現在、申請者らは、①急性腎障害時の糸球体ATP動態解析、②ATP可視化マウスを用いた腎スライス培養を用いた腎全領域ATP観察、の2つのテーマを同時に進行しています。②のテーマは、①のテーマに比して、試薬等の経費がかかることが予想されますが、①のテーマの進捗が良好であり、予定より①を重点的に進めている状況です。 2021年度の繰越費用は、2022年度に②のテーマで使用する薬剤・培養関連の試薬購入に充てます。また①②テーマの実験結果の再現性を確認するために複数回実験を繰り返す必要があるため、必要経費が増えることが予想されるため、経費を繰越しさせて頂きます。
|