2021 Fiscal Year Research-status Report
腎炎・ネフローゼ症候群に対する新規治療戦略の探求:脂質異常症からのアプローチ
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21K16171
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
鈴木 泰平 昭和大学, 医学部, 助教 (10749948)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ネフローゼ症候群 / 脂質異常症 / 巣状分節性糸球体硬化症 / PCSK9 / エボロクマブ |
Outline of Annual Research Achievements |
ネフローゼ症候群は上皮細胞による糸球体濾過バリアの破綻をきたすことで生じる難治性の疾患群であり、その発症メカニズムの解明ならびに有効性の高い治療戦略の探求が急務である。 ネフローゼ症候群はしばしば重度の脂質異常症を合併するが、その発症機序や治療介入の意義については不明な点が多く存在する。近年脂質異常症の病態形成にProprotein Convertase Subtilisin / Kexin type 9(PCSK9)が関与することが明らかになり、種々の研究結果からネフローゼ症候群に併発した脂質異常症についてもPCSK9が関与する可能性が示唆されている。PCSK9に対するモノクローナル抗体であるエボロクマブは現在家族性高コレステロール血症や難治性脂質異常症に対して使用される治療薬であるがネフローゼ症候群に対する治療効果は未知である。 本研究はネフローゼ症候群の動物モデルであるマウスアドリアマイシン腎症に対してエボロクマブを投与し、その治療効果を検討することでネフローゼ症候群の発症・進展機序に関する考察を行い、また新たな治療戦略を構築することを目的とする。 我々は本研究において、エボロクマブのマウスネフローゼ症候群に対する蛋白尿減少効果ならびに糸球体上皮保護効果を発揮する可能性を示した。また、エボロクマブによるネフローゼ症候群治療効果のメカニズムに糸球体上皮細胞における脂質スカベンジャー受容体であるCD36が関与する可能性を見出した。本研究でネフローゼ症候群を呈する代表的疾患である巣状分節性糸球体硬化症患者の腎組織内でもCD36発現か亢進することが明らかとなり、エボロクマブによるヒトネフローゼ症候群に対する治療効果が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はネフローゼ症候群の動物モデルであるマウスアドリアマイシン腎症に対してPCSK9のモノクローナル抗体であるエボロクマブを使用し、治療効果ならびにそのメカニズムを明らかにすることを目的としている。本年度は本趣旨に準じて検討を行い、現時点までにマウスネフローゼ症候群に対するエボロクマブによる治療効果が示され、そのメカニズムに関しても脂質スカベンジャー受容体であるCD36が関与することが示唆された。以上のことから本研究課題の進捗状況としておおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降もこれまでに得られている研究解析データや試料をもとに、エボロクマブによるマウスネフローゼ症候群に対する治療メカニズムの詳細な検討を推進する。また、本研究から得られた結果を踏まえネフローゼ症候群発症機序に関する新たな考察を加えることで、エボロクマブの臨床応用に対する可能性について探求する。
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Research Products
(1 results)